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直腸がん

家庭医学館の解説

ちょくちょうがん【直腸がん Rectal Cancer】

◎良性腫瘍(りょうせいしゅよう)のがん化が大部分
[どんな病気か]
 直腸にできる腫瘍のなかで悪性のものを直腸がんといいます。近年、増加する傾向にありますが、これは健康診断で行なわれる検便(便潜血(べんせんけつ)検査)の普及、注腸X線検査、内視鏡検査の進歩により発見されることが多くなったことも、その背景にあります。
 直腸がんは大腸がんの約半分を占めています。年齢は50~60歳代が多く、女性より男性のほうに少し多くみられます。
 直腸がんができる原因はわかっていませんが、一般的には腺腫(せんしゅ)というポリープ状の良性腫瘍ががん化しておこると考えられています。また、直腸の正常粘膜(ねんまく)から小さいがんが直接できることがあるともいわれています。
◎早期から現われる出血症状
[症状]
 もっとも多くみられる症状は出血です。盲腸(もうちょう)や上行結腸(じょうこうけっちょう)のがんとはちがい、直腸がんは肛門(こうもん)に近いところにできるため、早い時期から出血症状が現われます。ポリープ状の腫瘍ががん化すると、血が出やすくなり、ちり紙に血がつくようになります。腫瘍の中央がくずれて潰瘍(かいよう)ができると、便の表面に筋状に血がつきます。
 また、痔核(じかく)や裂肛(れっこう)などの肛門の病気でも肛門からの出血がありますから、肛門の病気と直腸がんとの区別が必要になります。この区別は簡単ではありませんから、自己判断は禁物です。
 下痢(げり)や便秘も生じます。直腸がんが初期のうちは、炎症がおきたり、軽い閉塞(へいそく)によって腸の運動が盛んになることで下痢がおこるのですが、がんが大きくなってくると、便の通過が妨げられるために、便秘がちになるのです。
 こうして、それまで規則正しかった排便習慣が乱れてきます。
 さらに残便感(ざんべんかん)も現われます。これは便意があってトイレにいっても、ほんの少ししか便が出ず、少ししてからまたトイレに行くような状態のことで、これを1日に数回くり返すようになります。
[検査と診断]
 健康診断あるいは人間ドックなどで、肛門から指を挿入して肛門や直腸にがんの有無をみる直腸肛門指診(ししん)検査がもっとも簡単です。少し大きくなった直腸がんなら、この検査でほとんど見つけられるといってもおおげさではありません。
 小さい直腸がんを発見するには、肛門からバリウムを入れ、X線撮影を行なう注腸造影(ちゅうちょうぞうえい)検査を実施します。苦痛もなく、簡単な検査です。
 より確実な診断のためには内視鏡検査を行ないます。これによって、直接ポリープ状のがんを見つけることができますし、さらに目で見ただけでは診断がつかない場合、組織を少し採取して、その細胞を顕微鏡で見て診断することができます。この方法は生検法(せいけんほう)と呼ばれ、内視鏡で行なう場合は痛みはありません。
◎治療法は部位と程度で異なる
[治療]
 直腸というのは、肛門から約15cmまでの部分をいいますが、この部分にできたがん(図「直腸がん」)の治療法は、その進行の程度と、肛門からの位置(距離)によって、以下に述べるようにさまざまです。
 小さいポリープ状の早期がんが疑われるときは内視鏡的ポリープ切除術が行なわれます。これは大腸ファイバースコープを用いて、内視鏡的にポリープを切除する方法です。
 なお、切除されたポリープは必ず顕微鏡で検査され、がんの深さを確認して、内視鏡的治療で十分か、追加治療が必要かどうかが判断されます。
 肛門に近い部分のがんには経肛門的局所切除術(けいこうもんてききょくしょせつじょじゅつ)が簡単でよい方法です。これは、肛門から直接がんのできた部分を切除するもので、切除されたがんを顕微鏡で調べるのは内視鏡的ポリープ切除術と同様です。
 進行した直腸がんに対しては、開腹(かいふく)手術を行なわなければなりません。これは、直腸のがんのほかに、リンパ節をも含めて広く切除する方法です。
 最近、器械を用いて腸をつなぐ技術がたいへん進歩したため、直腸がんの部位が肛門から約6cm以上奥にある場合は、肛門温存直腸切除術(こうもんおんぞんちょくちょうせつじょじゅつ)ができるようになりました。これは、直腸がんを切除し、肛門は残してS状結腸と肛門をつなぐ方法です。
 肛門に近いところにできたがんの場合は、やむをえず直腸切断術と永久人工肛門造設術(えいきゅうじんこうこうもんぞうせつじゅつ)が行なわれます。これはがんとともに肛門を切除し、人工肛門を左下腹部につくるものです。
 このようないろいろの手術によって、直腸がんの治療成績は向上しています。さらに最近は、自律神経温存手術が可能になったため、従来のように手術による排尿障害や性機能障害の心配がなくなりました。これによって、手術を受けた後も、ほとんどふつうどおりの生活が送れるようになりました。
◎早期発見のためには健診を
 健康診断や人間ドックで検便および肛門指診を定期的に受けることをお勧めします。また、適切な食生活、十分な睡眠、適度な運動をして規則正しい排便を心がけましょう。
 さらに、いぼ痔(じ)(痔核(じかく))、切れ痔(裂肛(れっこう))など、肛門から出血する病気をきちんと治療しておき、直腸がんにともなっておこる出血や排便異常などの症状を見逃さないようにしましょう。

出典|小学館家庭医学館について | 情報

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