尿が出にくい(
尿が出にくい、頻尿があるという場合は、高齢男性では
高齢女性の排尿困難、頻尿では、過去に子宮がんの手術などを受け、膀胱を支配する神経が損傷されたために起こる神経因性膀胱が原因になっていることが多いようです。まれに、
高齢男性に多い前立腺肥大症については、次項で解説しているので参照してください。時に前立腺がんの心配があるので、血液中の前立腺腫瘍マーカー(PSA)、専門医による前立腺の触診、超音波検査、前立腺生検(針を刺し前立腺の組織片を取り出して顕微鏡で調べる)で確かめる必要があります。
高齢の男女に共通してみられる排尿障害の原因として多いのが神経因性膀胱なので、以下、これについて解説します(表9)。
阿曽 佳郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
排尿状態の異常を総称したもので、排尿困難、尿線(放尿の際に描く線)の異常、二段性排尿、尿閉、尿失禁および遺尿などがある。
(1)排尿困難 尿が出にくい場合を意味し、排尿しても膀胱(ぼうこう)が完全に空(から)にならない。多くは膀胱に尿がいつも残っている感じ(残尿感)を訴え、排尿後尿道から膀胱に細い管を入れて導尿すると残尿が証明される。前立腺(せん)肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、神経因性膀胱、前立腺癌(がん)などでおこる。排尿困難が進行すると尿閉になることがある。
(2)尿閉 膀胱に尿がたまっているにもかかわらず一滴も出ない状態をいい、激しい尿意とともに膀胱が張ってくると非常な苦しみを訴える。前立腺肥大症をもつ人は飲酒中に突然尿閉になることがある。膀胱の収縮力が低下すると放尿力が低下し、尿線が細くなる。
(3)遷延性排尿 尿が出始めるまで時間がかかるものをいい、膀胱以下の部分に異物ができたり炎症がおこったりして尿道が狭くなったときにみられる。また、正常の人でも他人の見ている前で排尿するときは、心因性の遷延性排尿の状態になることがある。
(4)尿線の異常 尿の出口である外尿道口に異常があると、排尿の際に尿線が分かれる。排尿中突然、尿線が中絶する場合を尿線中絶といい、膀胱結石や凝血塊が膀胱の出口をふさぐためにおこる。
(5)二段性排尿 膀胱壁の一部が膀胱外へ嚢状(のうじょう)に突出した膀胱憩室があると、膀胱にある尿が一度出たあと憩室内の尿がふたたび膀胱にたまるため、もう一度排尿することになる。
(6)尿失禁 尿が無意識的に排出する排尿障害をいう。普通成人女子に多くみられるのは、咳(せき)、くしゃみおよび激しい体動のとき尿が漏れるもので、ストレス性尿失禁という。尿失禁は種々の器質的疾患でも多くみられ、脳卒中、脊髄(せきずい)損傷、前立腺肥大症、尿路先天性奇形などにおこる。
(7)遺尿症 膀胱に尿はたまるが、無意識のうちに排尿してしまうものをいい、普通は夜尿症を意味する。
[土田正義]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
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