改訂新版 世界大百科事典 「芝居囃子日記」の意味・わかりやすい解説
芝居囃子日記 (しばいはやしにっき)
歌舞伎囃子方6世田中伝左衛門の筆録。成稿年代不詳。江戸三座由緒書と55章の本文から成り,江戸歌舞伎の囃子を中心とする慣行,故事,逸話,秘伝などが詳記された貴重な資料である。ただし原本は伝存せず,2系統の伝本が認められる。(1)11世杵屋(きねや)勘五郎の写本(亡失)が3世杵屋六四郎に伝えられたものを町田嘉章が1924年に筆写した町田本。(2)関根只誠が《戯場年表》《歌舞伎道成寺考》に引用したもの(原本は伝存せず)。(1)と(2)のあいだには本文の異同がある。《演劇と舞踊の図解》第4編所収の翻刻は,町田本の再写本渥美清太郎本を底本とするが,〈中村座囃子日記〉と題されている。また,《日本庶民文化史料集成》第6巻に,町田本の再写本西山松之助本を底本とする翻刻,解題を収めている。
執筆者:景山 正隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報