日本大百科全書(ニッポニカ) 「花のノートル・ダム」の意味・わかりやすい解説
花のノートル・ダム
はなののーとるだむ
Notre-Dame-des-Fleurs
フランスの作家ジャン・ジュネの長編処女作。1948年刊。フレーヌ刑務所で服役中の44年に書き上げ、最初は秘密出版物として頒布されたのち、やがて一般に公刊された。女装の男娼(だんしょう)ディビーヌを中心に、男色者たちの性愛と心理を赤裸々に語りながら、ジュネ独特の壮麗な言語表現によって、卑猥(ひわい)も神聖の美に昇華させ、読者を衝撃した。同性愛の男子の性行動をこれほど繊細優美に描写して清浄な詩的感動を与える作品は文学史上最初のものであった。小説というよりも詩的散文に近い異色作。
[曽根元吉]
『堀口大学訳『花のノートルダム』(新潮文庫)』