苛つ（読み）イラツ

デジタル大辞泉

いら・つ【^▽苛つ】

［動タ五（四）］気持ちが落ち着かなくいらいらする。いらだつ。
「待ちかねて気を―・ちながら」〈二葉亭訳・めぐりあひ〉
［動タ下二］物事を早くするようにせきたてる。
「下り候へ、と―・てけれども」〈平家・一〉

出典　小学館

精選版 日本国語大辞典

いら・つ【苛】

1. [ 1 ] 〘 自動詞 タ行四段活用 〙 ＝いらだつ（苛立）[ 一 ]
   1. [初出の実例]「互にかかるを待ちけるが、いらって熊坂早足を踏み」(出典：大観本謡曲・熊坂（1514頃）)
2. [ 2 ] 〘 他動詞 タ行四段活用 〙
   1. ① ＝いらだつ（苛立）[ 二 ]
      1. [初出の実例]「様子が有ふ子細を語れと気をいらてば」(出典：浄瑠璃・平仮名盛衰記（1739）四)
      2. 「時には気を焦(イラ)ッて、聞えよがしに舌皷など鳴らして聞かせる事も有る」(出典：浮雲（1887‐89）〈二葉亭四迷〉三)
   2. ② （あせって物事を）急がせる。
      1. [初出の実例]「急ぐとすれば雪道に、足の運びをいらちつつ、御前へこそは進みける」(出典：歌舞伎・千歳曾我源氏礎（1885）二幕)
3. [ 3 ] 〘 他動詞 タ行下二段活用 〙 ( 「いらづ」とも ) 物事を早くするよう急がせる。せきたてる。
   1. [初出の実例]「『なに者ぞ、狼藉なり。御出のなるに、のりものよりおり候へ、おり候へ』といらてけれども」(出典：平家物語（１３Ｃ前）一)
   2. 「詞はいらづるとよむぞ」(出典：玉塵抄（1563）四九)

出典　精選版 日本国語大辞典