精選版 日本国語大辞典 「茅輪」の意味・読み・例文・類語
ち‐の‐わ【茅輪】
- 〘 名詞 〙 茅(ちがや)または藁(わら)をたばねてつくった大きな輪。六月祓(みなつきばら)えの病気・厄よけのまじないとして鳥居などにかけ、人々にくぐらせた。あさじのなわ。茅縄(ちなわ)。《 季語・夏 》
- 茅の輪〈厳島図会〉
- [初出の実例]「即ち詔りたまひし茅輪をもちて腰の上に着けしめよ」(出典:備後風土記逸文(釈日本紀所載)(1274‐1301))
- 「茅の輪から丸々見ゆる淡ぢ島」(出典:俳諧・七番日記‐文化一五年(1818)三月)
茅輪の語誌
( 1 )由来は挙例の「備後風土記逸文」にみられ、武塔神が、貧困ながらも一晩をとめてくれた蘇民将来一家に対し、返礼として、茅の輪を腰につけさせ、疫病から免かれさせたという伝えによる。
( 2 )平安末から鎌倉時代にかけての夏越の祓の歌をみると、茅の輪とともに「すがぬき」がよまれている。茅と菅と素材の違いのみで同じものであろうともいわれているが、茅の輪が「みそぎ川流すちのわの程もなく過ぐる月日にめぐりあふかな」〔夫木‐九〕のように流すものとしてうたわれているのに対し、「すがぬき」は「夏はつるけふのみそきのすかぬきをこえてや秋の風はたつらむ」〔広本拾玉集‐二〕とあって、菅の輪をくぐったことを想像させ、微妙な相違をみせている。あるいは、いつの頃からか両者が混同していったか。
( 3 )「御湯殿上日記(慶長九年六月三〇日)」では、六月晦日に輪くぐりをしたことが年ごとに記述されているが、「みな月のわ」あるいは「輪」「御わ」とのみ記されている。一方、「ちのわ」は一三例みとめられるものの、いずれも六月晦日ではなく、七月七日もしくは七月六日の条に記されており、七夕の行事と結びついていたことが想像される。