改訂新版 世界大百科事典 「荷電独立性」の意味・わかりやすい解説
荷電独立性 (かでんどくりつせい)
charge independence
原子核を構成する陽子と中性子とは,スピンが同じで質量も似た値をもっているので,1個の粒子(核子)の異なる二つの状態とみなすと便利なことが多い。この二つの状態を区別する量子数を,通常のスピンとの類似性から,アイソスピン(荷電スピン)と呼ぶ。通常は陽子が+1/2,中性子が-1/2の状態とされるが,便宜上のことに過ぎず,逆の割当てをする場合もある。核子間に働く核力は,このアイソスピンについて種々の対称性をもつと考えられているが,そのうち陽子と中性子の入れかえに対する対称性を荷電対称性charge symmetry,より一般にアイソスピン空間での任意の回転に対する対称性を荷電独立性と呼ぶ。荷電独立性は核力に対してだけでなく,強い相互作用全体のもつ対称性と考えられている。
執筆者:矢崎 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報