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核力 かくりょくnuclear force

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

核力
かくりょく
nuclear force

原子核を構成する核子間に働く力。2個の核子が約 10-15m 以内に接近したときに働く近距離力である。 1934年湯川秀樹は量子論の一般原理に従って核力の場に付随する粒子の存在を予告した。核力の到達する距離はこの粒子の質量を m とするとほぼ h/2πmc ( h はプランク定数,c は真空中の光速度) であることから,この粒子が電子の質量の約 200倍で,電子と陽子の中間の質量をもつと推定し,これを中間子と名づけた。これが π 中間子であり,確認されたのは 47年のことであった。核力は核子がπ中間子やρ,ω 中間子等を交換することによって生じる複雑な力で,2核子間の距離,スピンおよび荷電状態によって異なり,またテンソル力を含む。さらに核子のクォーク構造に関係すると考えられている強い斥力芯が存在する。2陽子間の核力は2中性子間の核力と同じで,これを荷電対称性という。陽子と中性子間の核力も,スピンや相対角運動量の値が同一ならば2陽子間,2中性子間の核力と同じで,これを荷電独立性という。

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デジタル大辞泉の解説

かく‐りょく【核力】

原子核内で、陽子中性子を固く結びつけている力。陽子と中性子が接近した時に働き、中間子によって媒介される。

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百科事典マイペディアの解説

核力【かくりょく】

核子と核子の間に働く力。きわめて狭い領域(10(-/)13cm程度)だけに強い引力として作用し,核子を狭い空間内にまとめて1個の原子核ができるのは核力によるものとされている。
→関連項目引力原子核質量欠損力(物理)湯川秀樹

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世界大百科事典 第2版の解説

かくりょく【核力 nuclear force】

核子と核子との間に働く力。原子核は陽子と中性子(まとめて核子という)が結合してできたものである。これらを結びつける力として,万有引力をそれらの質量から計算すると,小さすぎてまったく問題にならない。電気的に中性の中性子も結びつけられているのだから,静電気の引力でもありえない。したがって核子を結ぶ力はこれらの力とは異なる新しい力である。1932年中性子が発見され,W.K.ハイゼンベルクは原子核が陽子,中性子で組み立てられており,それらの間に交換力という新しい形の力が働いていることを指摘した。

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大辞林 第三版の解説

かくりょく【核力】

核子(陽子と中性子)の間に作用して原子核を構成する力で、到達距離が 2×10-15m 程度ときわめて短く静電引力などに比べてはるかに強い力。湯川秀樹により、中間子によって媒介されることが明らかにされた。根源はハドロン間の強い相互作用にある。 → 強い相互作用

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

核力
かくりょく
nuclear force

原子核の構成粒子である核子(陽子と中性子の総称)の間に働く力。自然界の四つの基本的相互作用(強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用、重力相互作用)のなかの強い相互作用に属する。原子核は核力のもたらす引力的効果で結合している。核力の本性についての理解は、1935年(昭和10)湯川秀樹(ひでき)の中間子論によって開かれた。二つの核子の間で中間子(まず第一にπ(パイ)中間子)が交換されることによって核力が生じる。核力の到達距離は、πのコンプトン波長約1.4フェムトメートル(1フェムトメートルは1000兆分の1メートル)であり、それ以遠は1個のπの交換で生じる力による。近距離になると、2個以上のπおよびこれらが共鳴してできる重い中間子の交換の力が重要となる。さらに至近距離になると、核子を構成するクォークが関与した力が働く。核力は、クーロン力のように距離だけで決まる力でなく、2核子の状態(角運動量、パリティなどの量子数)に依存する。他方、核力では荷電独立性が成り立つ。すなわち、2核子系の同じスピン・パリティの状態では、核力は電荷によらず同じであるという近似的対称性を示す。
 原子核を結合させる核力ポテンシャルの平均的な様相は、約1フェムトメートルで約1億電子ボルトの引力、至近距離で芯(しん)状の斥力(反発しあう力)という特徴を示す。内側で強い斥力と引力の効果が相殺する傾向があるため、原子核の結合には、湯川中間子論の与える1個ないし2個のπ中間子の交換による核力が重要となる。このような性質と短距離力であることから、核力は強いが、運動エネルギーに比して結合力は強くないので、原子核は、ヘリウム原子の系と同様に、量子効果の大きい系である。
 2007年に、核子間に働く力のポテンシャルを格子ゲージ理論のコンピュータ・シミュレーションで導く研究が行われた。結果は湯川中間子論でのπ中間子の交換による核力のポテンシャルとおおよそ一致している。すなわち、核子が遠くにあるときはπ中間子を1個交換する寄与が、互いに近づくと複数のπ中間子の交換が利き、さらに至近距離では大きな斥力の芯が再現されている。
 核力をもっと広義にとらえ、核子の同族であるハイペロンを加えたバリオンの間に働く力とすることもできる。ハイペロンは核子にはない奇妙さ(ストレンジネス)の自由度をもつので、広義の核力はこの量子数にも依存し、その多様性も増す。しかし、二つのバリオンで結合状態をつくるのは、陽子と中性子よりなる重陽子(ジュウテロン)のみである。[玉垣良三・植松恒夫]
『玉垣良三「核力の多面性」(中村誠太郎監修『大学院原子核物理』所収・1996・講談社)』

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