アイソスピン(その他表記)isospin

翻訳|isospin

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイソスピン」の意味・わかりやすい解説

アイソスピン
isospin

陽子中性子は同一の素粒子核子)の異なる荷電状態とみなされ,核子の内部自由度を記述するため,ウェルナー・K.ハイゼンベルク電子スピンから類推してアイソスピンを導入した。すなわち,核子はアイソスピン 1/2をもち,陽子と中性子はそれぞれアイソスピンの第三成分 I3が 1/2および-1/2の状態として表現される。荷電スピンともいう。慣習上,原子核物理学では符号を逆にとり,陽子を I3=-1/2,中性子を I3=1/2の状態に対応させる場合が多い。同様にπ中間子のアイソスピンは 1であり,I3が 1,0,-1の状態がそれぞれπ+,π0,π-中間子に対応する。強い相互作用をするすべての粒子ハドロン)は,電磁相互作用弱い相互作用の影響を無視すれば,アイソスピンの固有状態である。ハドロンを構成するクォークのレベルでみると,アイソスピンの第三成分はクォークのもつ内部量子数(香りの量子数)の一つで,uクォークは I3=1/2,dクォークは I3=-1/2,その反クォークは符号を変えたものをもち,他のクォークは I3=0である。uクォークと dクォークがほぼ同じ質量であることがアイソスピンの有効性を高めたといえる。(→荷電空間

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改訂新版 世界大百科事典 「アイソスピン」の意味・わかりやすい解説

アイソスピン
isospin

原子核質量数が等しく(一般には少し異なる),原子番号(荷電)の異なるものは同重体,同重核,あるいはアイソバールisobarと呼ばれる。陽子と中性子は質量数が1の同重体である。アイソスピンは同重体で荷電の異なるものを区別するために導入された概念で,荷電スピンとも呼ばれる。同重体は質量がほぼ等しいだけでなく,荷電以外はほとんど同じ性質をもつので,異なる粒子というよりは同じ粒子の異なる状態として扱われる。量子力学では粒子の状態を指定するのに,その自転の大きさ(スピン)と回転軸の方向が用いられる。これにならって同重体は荷電空間という仮想空間内の回転体であるとし,そのアイソスピンが上を向いた状態が荷電が最も大きく,下を向いたものが最も小さいとする。量子力学によるとスピンをある方向に投影した値は1だけ離れたとびとびの値のみをとる。したがってアイソスピンの大きさをIとするとき,その高さはII-1,I-2,……,-Iという2I+1個のみが可能であり,それぞれを同重体の粒子に対応させる。ただしI整数または整数の半分である。核子のアイソスピンはI=1/2であり,それが上を向いた状態(1/2)が陽子,下を向いたもの(-1/2)が中性子である。またπ中間子のアイソスピンは1で,上向き(+1),横向き(0),下向き(-1)がそれぞれπ⁺,π0,π⁻に対応する。
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世界大百科事典(旧版)内のアイソスピンの言及

【荷電独立性】より

…原子核を構成する陽子と中性子とは,スピンが同じで質量も似た値をもっているので,1個の粒子(核子)の異なる二つの状態とみなすと便利なことが多い。この二つの状態を区別する量子数を,通常のスピンとの類似性から,アイソスピン(荷電スピン)と呼ぶ。通常は陽子が+1/2,中性子が-1/2の状態とされるが,便宜上のことに過ぎず,逆の割当てをする場合もある。…

※「アイソスピン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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