核子(読み)かくし(英語表記)nucleon

翻訳|nucleon

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

核子
かくし
nucleon

原子核を構成している陽子中性子総称。陽子と中性子はともにスピン 1/2 でフェルミ統計に従い,質量がほぼ等しい。また,数個の陽子と中性子が強く結合して原子核をつくるとき,陽子と陽子,中性子と中性子,陽子と中性子の間に働く核力はほぼ等しい。陽子は正電荷であるのに対し中性子は電気的に中性であることを除けば,両者は非常によく似ており,しかもβ崩壊によって互いに他に転換するので,陽子と中性子とを1つの粒子の2つの異なる荷電状態と考えるとき,この粒子を核子と呼ぶのである。核子はディラック方程式に従うが,この方程式から予想される値より大きい異常磁気モーメントをもつのは,核子がクォークから成る複合粒子であることによる。核子はバリオンのなかで最も軽く,その反粒子を反核子という。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

かくし【核子 nucleon】

原子核を構成する基本粒子である陽子中性子の総称。陽子と中性子は質量がほぼ等しく,電磁的性質以外はほとんど同じ性質をもち,またπ中間子を放出して互いに移り変わる。したがってこれらは別の粒子ではなく,核子という粒子の二つの状態とみなされる。核子はスピンが1/2,アイソスピンが1/2のフェルミ粒子である。アイソスピン【宮沢 弘成】

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

かくし【核子】

原子核を構成する素粒子である陽子と中性子の総称。ともに2分の1単位のスピンをもち、 β- 、 β+ 崩壊のときに陽子と中性子とは互いに移り変わる。

さなご【核子】

瓜のたね。うりざね。
米の粉のかす。粉をふるうとき、篩ふるいに残るもの。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

核子
かくし

原子核を構成している陽子と中性子をまとめた呼称。原子の中心にある原子核は2種類の粒子、陽子と中性子が集まってできたものである。陽子も中性子もともにスピン1/2で、電子と同様フェルミ‐ディラック統計に従う。したがってこれらの粒子の集合体では、同じ粒子状態には1個の粒子しか入れないというパウリの原理が働く。陽子と中性子の質量はほとんど同じで、電子の質量の約1800倍である。中性子は電気的に中性であるが、陽子は電子の電荷と同じ大きさで符号が反対の正電荷をもつ。陽子と中性子は、電荷以外の性質はほとんど同じで、またそれらの間に働いている相互作用の性質も同じである。そのためこの二つの粒子は、同じ基本実体である核子の二つの状態であるとみなせる。
 核子間に働く力は、それらが集合体になったとき強い結合エネルギーを生み出す。核子間に働く核力は、湯川秀樹(ひでき)が提唱したπ(パイ)中間子をはじめとするさまざまの中間子の交換によるもので、強い相互作用の範疇(はんちゅう)に入る。また、陽子間にはクーロン相互作用が働く。中性子は陽子に比べて、電子の質量の約2倍だけ重いので、エネルギー的に、中性子は電子を放出して陽子に変わりうる。実際、裸の中性子はβ(ベータ)崩壊で陽子に変わる。その平均寿命は約17分である。裸の陽子の他の粒子への崩壊は観測されていない。[池田清美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の核子の言及

【原子核】より

…原子の質量の大部分を担っている。生物学における細胞の核などと混同するおそれのない場合には単に核nucleusと呼ばれることもあり,原子核に関する用語には核力,核子など核を接頭語とするものが多い。原子核の電荷は,電子の電荷の絶対値をe,原子番号をZとしてeZで与えられる。…

【素粒子】より

…中性子はnで示される。また陽子と中性子は核子と総称され,Nで表される。
[π中間子とμ粒子]
 電気的に中性の中性子がなぜ,原子核という小さな領域に閉じ込められているのであろうか。…

※「核子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

多文化主義

マルチ・カルチュラリズムともいう。さまざまな人種,民族,階層がそれぞれの独自性を保ちながら,他者のそれも積極的に容認し共存していこうという考え方,立場。「人種のるつぼ」的な同化主義に対抗する考え方で,...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android