日本大百科全書(ニッポニカ) 「華胥の夢」の意味・わかりやすい解説
華胥の夢
かしょのゆめ
よい夢のこと。中国最初の天子といわれる黄(こう)帝が、天下の治まらぬことを心配し、3か月もの長い間、政治を断念していたある日のこと、昼寝をして理想郷に遊んだ夢をみた。この理想郷が華胥氏の国で、この国では何年も自然無為、民人は無欲で、生死にも心を煩わされず、物に執着することもなく、空を自由自在に飛行するなど、すべてに超然としていられる楽しい国であった。夢覚めてのち、黄帝は大いに心に悟るところがあり、以来、天下がよく治まるようになった、とある『列子』黄帝篇(へん)の故事による。「華胥の国」は理想郷の異称でもあり、転じて「華胥の国に遊ぶ」といえば、よい気持ちで昼寝をすることをいう。
[田所義行]