生没年不詳。中国古代の思想家。道家(どうか)の代表者、またその著作とされる書物。名は禦寇(ぎょこう)。鄭(てい)の人。老子(ろうし)の弟子、あるいは関尹子(かんいんし)の弟子、あるいは老商子(ろうしょうし)の弟子などといわれ、また荘子(そうし)の先輩ともされるが、その事績は不明である。『列子』や『荘子(そうじ)』の書中に列禦寇の説話がみえるが、いずれも事実とは定めがたく、ために人物の実在を疑う説もある。
[金谷 治 2015年12月14日]
書物は8編で、晋(しん)の張湛(ちょうたん)の注がついている。著作の時代ははっきりせず、書中に戦国末の人名があったり、漢代に流行した緯書(いしょ)説と同じ生成論があったり、仏陀(ぶっだ)を思わせるような「西方の聖人」を疑う説があったりするために、明(みん)のころから疑われ、今日では魏(ぎ)・晋(しん)間(3世紀ごろ)の偽作とする説が有力である。ただ、内容には、『荘子』と重なるところで『列子』のほうが古くみえるところもあり、古い資料によりながら修飾を加え、また新しく書き加えたというのが真相であろう。したがって、純粋な列子の思想は明らかにしがたいが、『呂氏春秋(りょししゅんじゅう)』で「虚を貴んだ」といわれているのを根拠にすると、利害得失の念にとらわれない虚心の処世を善しとしたものであるらしい。『老子』のいう無為、無知、無欲などに通ずる思想であろう。『列子』では、天地の生成変化を論じて形と気と質の三者が混じた「太易(たいえき)」をその始源に置き、死生の往反を説いて神仙的養生説にも及び、運命を説き夢を説き、激しい快楽説を唱えるなど、さまざまに特色のある記事が少なくないが、また『荘子』をはじめとする他書との重複文も多い。
列子の像は、『荘子』のなかでも「風に御(ぎょ)して行く」などといわれて仙人めいた風貌(ふうぼう)もあるが、『列仙伝』や『神仙伝』ではまだ仙人として著録されない。しかし、唐代になると、道教の信仰に伴って荘子や尹文子(いんぶんし)とともに神格化され、冲虚真人(ちゅうきょしんじん)と号して祀(まつ)られた。書物も『冲虚真経』とよばれ、宋(そう)代では『冲虚至徳真経』ともなって尊重された。
[金谷 治 2015年12月14日]
『福永光司訳注『中国古典文学大系4 列子』(1973・平凡社)』
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