翻訳|nap
挙例の「笈日記」のように俳句には古くから詠まれていたが、夏の季語として採用されたのは、季寄せ類では享和二年(一八〇二)序「新季寄」、類題句集では文政六年(一八二三)刊「俳諧発句題叢」からで比較的新しい。
昼間にとる一時的な睡眠。午睡(ごすい)/(ひるね)とも書く。夜行性動物や夜に仕事をもつ人が昼間に寝るのは,単なる昼夜リズムの逆転にすぎないから昼寝とは呼ばない。生理的にみれば,昼寝は夜の眠りだけでは不足する絶対睡眠時間の補充という意味が大きい。ヒトを含めた多くの動物の乳幼児は成長のために,また熱帯地方にすむヒトや動物では,体力の消耗を防ぐために,昼寝は不可欠なものである。しかし人がいつ眠るべきかということは文化の規制を受けている面があって,昼寝の習慣は文化の現象である。スペインのシエスタのように長い昼休みがあって,その間に実際に昼寝をする人も多い。熱帯地域では2,3時間にもわたる昼休みを定めている例は多く,昼寝もできる。河口慧海によれば,チベットでは昼寝はよくないとされ,ことに夏の昼寝は熱病になりやすいと信じられていた。とくに病人には医師が昼寝を厳禁して横にならせず,介添人は患者を眠らせないように気を配るという。メラネシアのティコピア島では夜漁をするので,睡眠の時間は昼でも夕方でもおかまいなしになっている。夜の睡眠と同じく昼寝も,容易に入眠できる人とそうでない人がいる。シェルドンWilliam H.Sheldonの気質分類によれば,〈内臓はりきり型viscerotonia〉の人は幼児のような自由な寝相でいつどこででも容易に深く眠るが,〈脳はりきり型cerebrotonia〉の人は入眠困難,浅い眠りの傾向があり,宵っぱりの朝寝坊で昼寝もむずかしいという。
執筆者:藤岡 喜愛
かつて日本の農村では,夏の間,昼食後に仮眠をとる風習があった。これは,暑い盛りに農作業を避けて体力の消耗を防ぐとともに,夏の短い夜の睡眠不足を補ったり労力を回復するという意味で重要な休息であった。昼寝のできる期間は各地で異なり,地方ごとにその期間が定められていた。たとえば秋田県や和歌山県では,昼寝の期間を旧暦4月8日から旧暦8月1日(八朔(はつさく))と定めていたし,新潟県北部や島根県あたりでは田植から盆(または旧盆)まで,また大阪の南河内郡では半夏生(はんげしよう)から8月9日までと定めていた。こうしたきまりは,結局夏季の作業能率を高めるための工夫であり,奉公人が多く存在していた時代に盛んに設けられたものである。とくに八朔をもって昼寝の期間を終え,夜なべ仕事を始めるしきたりとしていた地方は広く,八朔を〈鬼節供〉とか〈八朔は婿の泣き節供〉などと称し,この日に作る特別な食物を八朔の苦餅(にがもち)(ぼた餅),泣饅頭(麦饅頭),涙飯(小豆飯)という所もあった。近畿地方では昼寝を〈日の辻休み〉といい,大阪市東成区などでは八朔を〈日の辻の取り上げ休み〉という風もある。いずれにしても,八朔は農民や奉公人にとってはあまりうれしくない折目であった。今日では,村の休日などの規定とともに,昼寝のきまりや昼寝自体も生活全般の急激な変化によって意味を失ってしまいつつあるものが多い。なお,俳句では朝寝は春の季題,昼寝は夏の季題とされている。
執筆者:飯島 吉晴
昼寝からめざめた場合に,気分がすっきりしているときと,ぼうっとしているときがある。それは,どのような睡眠パターンからめざめたかによるのであり,ノンレム睡眠の第2度と,レム睡眠からめざめた場合には,感覚,運動,認識能力についての成績がよく,深い眠りであるノンレム睡眠の第3,第4度からめざめた場合には悪いことがわかっている。松本淳治らもネズミを各種の睡眠パターンからめざめさせたときの条件反射の成績について調べたところ,浅いノンレム睡眠から起こした場合の成績が最もよく,レム睡眠,深いノンレム睡眠の順に悪くなることが明らかとなった。なお,人間が午前9時,午後12時半,午後2時,午後4時半からそれぞれ2時間眠った場合の睡眠各相の占める比率について,とくに第4度とレム睡眠との関係についてみると,昼寝の時間が夜に近いほどその関係は夜間睡眠の最初の2時間に似ており,昼寝の時間が朝に近いほど夜間睡眠の最後の2時間(第2度とレム睡眠が多い)に似ている。したがって寝起きのよしあしからみると昼寝をするならば午前中(朝寝)が最もよく,午後ならば昼食後すぐに寝て深い眠りに入らない30分以内におきるか,いっそのことレム睡眠のおこるまで眠って1時間半か2時間後におきるのがよいことになる。また,昼寝をした場合には,しなかった場合に比べて音,言葉に対する反応力がよくなっており,さらに睡眠不足を補う意味で不眠症の予防にもなり,昼寝のできる条件があればするとよい。
→睡眠
執筆者:松本 淳治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
昼間に眠ることで、午睡ともいう。成人では夜間における睡眠が通常であるため、ここでは乳幼児について述べる。乳幼児は新陳代謝が盛んで運動量も多く、また、発育途上ということから睡眠を十分にとる必要がある。生後1か月までは授乳時、排便時以外はほとんど眠っている場合が多い。その後、3か月ころまでは2~8時間ずつの睡眠を昼夜の別なくとっているが、3か月を過ぎるころから夜間は目覚めずに眠るようになる。3か月から1歳までは夜間で10~12時間、日中で4~6時間ほどの睡眠時間となるが、1歳を過ぎると昼寝の時間が減ってくる。幼児期までは、必要な睡眠時間を夜間のみで満たすことができないため、昼寝で補うことが必要となる。昼寝の必要時間は、年齢差や個人差、生活条件からくる差などで異なるが、乳児期は午前と午後で各1回の昼寝が必要とされる。3~4歳になると昼寝をしなくなる幼児が増えてくるが、遊びのための活動が著しい時期であるので、午後1回の昼寝が適切である。とくに夏季にはなるべく昼寝をさせて、休養を十分にとるよう配慮することが望ましい。
[井上義朗]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…スペイン語で昼寝の意。語源はラテン語で〈6番目の時刻〉にあたるhoram sextam。…
…新潟県新発田市の農村部では,野良に出てもすぐに仕事にかからずに吸いつけ煙草などして休むことをオリヤスミといい,午前,午後各1回の休憩をタバコヤスミ,ナカヤスミ,食事後のをジキヤスミといっていた。昼寝は夏季期間中に限られ,それも田植過ぎから八朔(旧8月1日)までの間というように決まっており,その時間は昼食後線香1本が燃え尽きるまでの間などといわれていた。このように休憩には,職種や土地ごとに一定の名称と慣習の存在していることが多い。…
…寝る時間については文化の規制がはたらくことが多い。チベットには昼寝をよくないとする考え方があり,とくに病人は昼に寝ないように介添えされる。しかし一方では日本の昔の農村のように,昼寝を認めた例もある。…
※「昼寝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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