…その一つ,江戸人形町大丸新道の女師匠さわの所に通っていた畳屋の平虎(ひらとら)(2世歌沢寅右衛門),は組火消しの辻音(つじおと)(1824‐94,本名福井音次郎)など,約50人あまりは,〈うたのおさわ〉の弟子というので,〈歌沢連〉と称していた。やがて,さわが亡くなり,妹,きわが稽古を続け,五百石取り旗本の隠居で笹本彦太郎(1797‐1857,号は笹丸,歌沢絃三),御家人の三男坊柴田金吉(初世哥沢芝金),小普請(こぶしん)方の次男森語一郎(1826‐86,のちの萩原乙彦,歌沢能六斎(うたざわのうろくさい))といった武家も仲間となり,端唄の流行が,三味線の騒ぎ歌としかみられなくなったのを嘆いて,〈もっと品のよい重みのある歌,節もていねいに細かくうたうようにしたらどうか〉と考えたのが,端唄を母体とした新しい三味線小歌曲の創作であった。学識のある笹本彦太郎が中心となり,秘書役で森語一郎,平虎,柴田金吉,辻音,そのほか数人が参画,水が集まって〈沢〉になるごとく,いろいろな音曲を加味した〈歌〉の集大成といった意味を含めて〈歌沢〉と称することにした。…
…以後《契情買言告鳥(けいせいかいいいつげどり)》(1800),《甲子夜話(きのえねやわ)》(1801)など後編続編を持つ作品が多く,後の人情本の基礎を作った。幕末の戯作者萩原乙彦(おとひこ)が2世谷峨を継いだ。【水野 稔】。…
※「萩原乙彦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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