蒔・播・撒(読み)まく

精選版 日本国語大辞典 「蒔・播・撒」の意味・読み・例文・類語

ま・く【蒔・播・撒】

〘他カ五(四)〙
① 種を散らし植える。
(イ) 穀物、野菜、草木種子を地上に散らし落とす。
※古事記(712)下・歌謡「山県に 麻祁(マケ)る菘菜(あをな)も 吉備人と 共にし摘めば 楽しくもあるか」
(ロ) (「種をまく」の形で、比喩的に用いる) 原因をつくる。
※源氏(1001‐14頃)東屋「数ならぬ身に、物思ふ種をやいとどまかせてみ侍らん」
② 物を散らし落とす。散らしかける。撒布する。また、カルタ、トランプなどの札を場に出す。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)二「坌塵の穢きものを散(マキ)婬欲を謗(ののし)り行ぜむとすとしりぬ」
③ 特に、火葬した骨の灰を散らばらせる。
万葉(8C後)七・一四一六「玉梓の妹は花かもあしひきのこの山陰に麻気(マケ)ば失せぬる」
④ 金銭を分け与える。
蒔絵(まきえ)をする。
※栄花(1028‐92頃)駒競行幸「包ませ給へる衣筥には、黄金して洲流をまきためり」
⑥ 遊里で、いやな客を、それといわずに追い返し、また、来ないようにしむける。
評判記色道大鏡(1678)一「まく いやなる者を、それといはずに其座をたたせ、又来るべき者を、こぬやうにしかけたる㒵をいふ」
⑦ (⑥から転じて) 疎んじ避ける。
浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)一「夫にだまされ京迄はるばるまかれました」
同行者仲間の目をくらまし、故意にはぐれる。
※浮世草子・色道大皷(1687)五「とかく祖父をまく分別して」

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