藤井小三郎(読み)ふじい・こさぶろう

朝日日本歴史人物事典 「藤井小三郎」の解説

藤井小三郎

生年生没年不詳
江戸前中期,人形浄瑠璃の女形人形遣い。上方で活躍。人形浄瑠璃豊竹座に属し,元禄末から享保末年にかけ,裾や背後からの突っ込み式一人遣い操法を主にして 若狭局,楊貴妃など多くのヒロインを遣い,女形人形遣いとして竹本座辰松八郎兵衛に比肩する名声を得た。宝永2(1705)年の「金屋金五郎後日雛形」における狂乱道行や,享保期の「鎌倉三代記」四段目「まよひの姿絵の段」,「玄宗皇帝蓬莱鶴」4段目「夢の場の段」,「北条時頼記」5段目「雪の段」,「清和源氏十五段」5段目「庵室の段」,「摂津国長柄人柱」大切「芦刈りの段」などを出遣いで演じ,全身を現して人形を操っている図が絵尽くし本などに残されている。その名は明和2(1765)年の豊竹座退転(閉座)時まで認められるが,寛保期(1741~44)以後のものは2代目とも考えられ,なお検討を要する。<参考文献>日本演劇文献研究会編『浄瑠璃研究文献集成』,人形舞台研究会編『人形浄瑠璃舞台史』

(平田澄子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の藤井小三郎の言及

【人形浄瑠璃】より

…34年人形に三人遣いが考案され,人形浄瑠璃の写実的傾向はいっそう強まり,特に竹本座の人形遣い吉田文三郎は人形が〈生きて働く〉と絶賛され,彼の考案した演出,衣装などは,現在まで文楽,歌舞伎の舞台に生き続けている。文三郎が立役(男性)を得意としたのに対し,豊竹座の藤井小三郎,小八郎は名女形遣いと謳われた。この人形の芸風の違いは,太夫の曲風とも関係する。…

※「藤井小三郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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