藤波の(読み)フジナミノ

デジタル大辞泉 「藤波の」の意味・読み・例文・類語

ふじなみ‐の〔ふぢなみ‐〕【藤波の】

[枕]
藤のつるが物にからみつく意から、「思ひもとほり」にかかる。
「―思ひもとほり若草の思ひつきにし」〈・三二四八〉
波に関する意から、「たつ」「よる」にかかる。
「―たちもかへらで君とまれとか」〈後撰・春下〉
[補説]「み」を引き出す序詞一部としても用いる。
「み吉野の大川野辺の藤波の並に思はばわが恋ひめやは」〈古今・恋四〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「藤波の」の意味・読み・例文・類語

ふじなみ‐のふぢなみ‥【藤波の・藤浪の】

  1. 藤のつるが他の樹木などにからみつくところから、「思ひもとほる」にかかる。
    1. [初出の実例]「藤浪乃(ふぢなみノ) 思ひもとほり」(出典:万葉集(8C後)一三・三二四八)
  2. 「ただ一目」にかかる。かかりかた未詳
    1. [初出の実例]「かくしてそ人の死ぬといふ藤浪乃(ふぢなみノ)ただ一目のみ見し人ゆゑに」(出典:万葉集(8C後)一二・三〇七五)

藤波のの補助注記

( 1 )「万葉集」に「ふぢなみ」は一九例あるが、枕詞用法として確実な例はの挙例のみである。ただし、「藤浪(ふぢなみの)咲春野爾(さくはるののに)延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ」(一九〇一)も「咲」を「佐紀(さき)」という地名と考え、「ふぢなみの」を「サキ」を導く枕詞と見なし、「さきのはるのに」と訓む説もある。
( 2 )八代集でも「ふぢなみ」は一一例を数えるが、枕詞の用法はない。ただ、「古今集‐恋四」の「み吉野の大川野辺のふぢなみのなみに思はば我が恋ひめやは〈よみ人しらず〉」では、序詞の一部として「並み」を導き出している。

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