( 1 )「万葉集」に「ふぢなみ」は一九例あるが、枕詞の用法として確実な例は①②の挙例のみである。ただし、「藤浪(ふぢなみの)咲春野爾(さくはるののに)延ふ葛の下よし恋ひば久しくもあらむ」(一九〇一)も「咲」を「佐紀(さき)」という地名と考え、「ふぢなみの」を「サキ」を導く枕詞と見なし、「さきのはるのに」と訓む説もある。
( 2 )八代集でも「ふぢなみ」は一一例を数えるが、枕詞の用法はない。ただ、「古今集‐恋四」の「み吉野の大川野辺のふぢなみのなみに思はば我が恋ひめやは〈よみ人しらず〉」では、序詞の一部として「並み」を導き出している。