一目(読み)いちもく

精選版 日本国語大辞典 「一目」の意味・読み・例文・類語

いち‐もく【一目】

〘名〙
一つの目。一方の目。また、片目。独眼。隻眼。
※古文真宝笑雲抄(1525)一「眇は一目の小也」 〔晉書‐殷仲堪伝〕
② 目が一つしかないとされる想像上の人間。一目国の人。
③ (━する) 一度だけちらりと見ること。一見。一瞥(いちべつ)
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉一「其貧窶(ひんく)一目して知らるべし」
草枕(1906)〈夏目漱石〉四「ジェリは一目宝石の様に見えるが、ぶるぶる顫へて、羊羹程の重味がない」
④ (━する) ひとめに見渡すこと。一望
蔭凉軒日録‐長享三年(1489)二月九日「洛中洛外、数里之景、在一目間奇絶々々」
※東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉初「九段は則ち都下最高の丘地にして而して都下を一目す」
⑤ 網、また、網状になったものの目の一つ。
※往生要集(984‐985)大文五「一目之羅、不鳥。万術助観念、成往生大事」 〔淮南子‐説山訓〕
⑥ 碁で、碁石、また、碁盤上の目の一つ。〔運歩色葉(1548)〕
⑦ ものごとを細かく分けた時、項より下位の区分の一つ。項目の一つ。

ひと‐め【一目】

〘名〙
① 一度見ること。ちょっと見ること。
万葉(8C後)一七・三九六七「山がひに咲ける桜をただ比等米(ヒトメ)君に見せてば何をか思はむ」
※薪小屋(1962)〈庄野潤三〉「ひと目で時代の古い物と分るものが」
② (「涙をひとめ」の形で) 目全体。目の中いっぱい。
源氏(1001‐14頃)須磨「女君、涙ひとめうけて見おこせ給へる」
③ 物または景色を一度に見渡すこと。一望。
説経節あいごの若(山本九兵衛板)(1661)四「三千大せかいをひとめに見」
結び目、編み目、網の目、盤の目などの、ひとつ。ひとつの目数。
徒然草(1331頃)一一〇「勝たんとうつべからず〈略〉一めなりとも、おそく負くべき手につくべし」
⑤ あることがらについての情報を集め、一度でわかるようにした冊子、表など。一覧。
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「貸家一目(かしやヒトメ)といふものさへ出来てゐる此東京に」

ひとつ‐め【一目】

[1] 〘名〙
① 目が一つであること。また、一つの目。あるいは、目が一つであるもの。ひとつまなこ。
落語唐茶屋(1897)〈六代目桂文治〉「一目(ヒトツメ)斗り居る所へ二つ目の者が行けば」
② 二つの目のうち、一方の目しか見えないこと。また、そういう人や見えるほうの目。ひとつまなこ。
※雑俳・柳多留‐三七(1807)「一眼で御家の曲りため直し」
③ (「め」は接尾語) 最初順番。また、そのもの。
[2]
[一] 江戸、本所の竪川に架けた一之橋の俗称。また、その付近。
[二] 江戸、本所の一つ目弁天の俗称。

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デジタル大辞泉 「一目」の意味・読み・例文・類語

いち‐もく【一目】

[名](スル)
ただちょっと見ること。一見。「一目して状況を把握する」
ひとめに見渡すこと。一望。
「洛陽の平原は―の中に落ちて」〈蘆花思出の記
碁盤上の一つの目。また、1個の碁石。
網や網状になったものの一つの目。→もく
[類語]ちらりちらとちらっとちらちらちらりちらりちら見一瞥いちべつ一目ひとめ一見瞥見べっけん一顧ちょっと見

ひと‐め【一目】

一度だけ、または、ちょっとだけ見ること。「一目見て気に入る」「一目で正体を見破る」
一度に広い範囲を見渡すこと。「町が一目で見渡せる」
目の中いっぱい。
「涙を―受けて見おこせ給へる」〈・須磨〉
[類語]ちらりちらとちらっとちらちらちらりちらりちら見一瞥いちべつ一目いちもく一見瞥見べっけん一顧ちょっと見

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