序詞(読み)じょし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

序詞
じょし

主として古代和歌などに用いられた修辞法の一種。論理的には本旨と無関係に,ある一語または一句だけを修飾するために,その語句の前におかれる修飾語句。機能は枕詞に似るが,序詞は通常2句以上。

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デジタル大辞泉の解説

じょ‐ことば【序詞】

じょし(序詞)2

じょ‐し【序詞】

序としての文章。前書き。はしがき。序文。
和歌や擬古文などで、意味上または音声上の連想から、ある語句を導き出すために前に置く言葉。枕詞(まくらことば)は1句(5音)を基準とし、音数の制約があるが、序詞は2句以上にわたり制限がない。例えば「あしひきの山鳥の尾のしだりをの長長し夜をひとりかもねむ」〈人麻呂集〉の歌で、はじめの3句の部分は「長長し」の序詞である。じょことば。
演劇などで、開幕のときに述べたり歌ったりする前口上(まえこうじょう)。観客に内容を暗示したり、幕前の経過を報告したりするのに用いる。プロローグ

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百科事典マイペディアの解説

序詞【じょことば】

和歌修辞法の一種。表現効果を高めるために,譬喩・懸詞・同音の語などを用いて,音やイメージの連想からある語を導くもの。〈じょし〉とも。枕詞と同じ働きをするが,枕詞がおおむね定型化した句であるのに対し,序詞には音数制限がなく,導く語への続き方も自由である。例えば〈あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかもねむ〉の上の句は,譬喩的に第4句〈ながながし〉を導き,〈かくとだにえや伊吹のさしも草さしもしらじな燃ゆるおもひを〉の上の句は,同音の反復で第4句〈さしも〉を導いている。
→関連項目プロローグレトリック

序詞【じょし】

序詞(じょことば)

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世界大百科事典 第2版の解説

じょし【序詞】

〈じょことば〉ともいう。文芸用語で,とくに歌論に用いられる。和歌の重要な修の一つ。主想部のある語句を導き出すために機能しつつ,一首中で主としてイメージ,音楽性の面を分担する。機能,役割は〈枕詞〉によく似ているが,〈枕詞〉が原則的に5拍であるのに対して,〈序詞〉は7拍以上または2句以上からなり,さらに,〈枕詞〉が慣用的,固定的であるのに対して,創造的,個別的である点で異なる。つまり〈序詞〉は,一首の勝負のしどころ,個性の発揮のしどころであって,その点で修辞法の一つとはいえ,歌人たちがその開発,発明に多大の努力を費やしてきた,和歌の本質にかかわる重要な部分なのである。

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大辞林 第三版の解説

じょことば【序詞】

和歌やある種の韻文で、ある語句を導き出すためにその前に置かれる修辞的語句。枕詞と同様の修飾機能をもつが、枕詞が原則として五音で被修飾語との関係が固定しているのに対し、序詞は長さも制限されず自由に創造されるという違いがある。実際に歌われる場での嘱目の景や物から歌の実質部へ転換する古代歌謡の発想形式に由来する。「春柳葛城山に立つ雲の立ちても居ても妹をしそ思ふ/万葉集 2453」のはじめの三句の類。じょし。

じょし【序詞】

じょことば(序詞)」に同じ。
はしがき。序文。
オペラ・劇などで、開幕に先立って述べる、内容を暗示する詩や献呈の辞。プロローグ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

序詞
じょし

歌文における修辞法の一つ。「じょことば」ともいう。主想を導き出すための修飾句だが、属目(しょくもく)あるいは想像上の素材を即興的に表現するもので、掛け合い、問答などに由来する発想形式。機能は枕詞(まくらことば)に近く、枕詞が1句以内であるのに対し、これは2句以上にわたる。序詞と主想とのつながりは文法的な正接の法によらず、(1)形容・比喩(ひゆ)、(2)懸詞(かけことば)、(3)同音・類音の反復、の三つに分類される。(1)「たらちねの母が養(か)ふ蚕(こ)の繭(まよ)ごもり/いぶせくもあるか妹(いも)に逢(あ)はずて」(『万葉集』)、上3句、蚕が繭にこもって、いぶせき意から比喩的に下句を導く。(2)「ますらをのさつ矢手挿(たばさ)み立ち向ひ射る/円方(まとかた)は見るにさやけし」(『万葉集』)、射る的と続き、地名の円方に懸詞でかかる。(3)「河上(かはのへ)のいつ藻(も)の花の/いつもいつも来ませわが背子(せこ)時じけめやも」(『万葉集』)、いつ藻が同音のいつもを導く。(1)~(3)いずれも、/までが序詞で以下が主想である。序詞をもつ歌を序歌という。[橋本達雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

じょ‐ことば【序詞】

〘名〙
浄瑠璃などで、大序の発端にある節章の用語。最初の語り出しで、三味線を断片的に入れて、棒よみ風に語るもの。
※浄瑠璃・源平布引滝(1749)一「〈序詞〉擅強の不臣神宗の盛業を妨。邦家陽九の厄に当り」

じょ‐し【序詞】

〘名〙
① 和歌・雅文などで、ある語句を引き出すために、音やイメージの上の連想からその前に冠する修辞のことば。枕詞(まくらことば)と同じ働きをするが、音数に制限がなく、二句以上三、四句におよぶ。じょことば。たとえば、「拾遺‐恋三」の「足引の山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかもねむ」のはじめの三句、「後拾遺‐恋一」の「かくとだにえやは伊吹のさしも草さしも知らじな燃ゆる思ひを」のはじめの三句など。
② 序のことば。はしがき。序言序文。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕
③ 音楽・戯曲・小説などで、全体の進行を暗示したり予告したりする内容をもった、前置きの部分。プロローグ。

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世界大百科事典内の序詞の言及

【序詞】より

…主想部のある語句を導き出すために機能しつつ,一首中で主としてイメージ,音楽性の面を分担する。機能,役割は〈枕詞〉によく似ているが,〈枕詞〉が原則的に5拍であるのに対して,〈序詞〉は7拍以上または2句以上からなり,さらに,〈枕詞〉が慣用的,固定的であるのに対して,創造的,個別的である点で異なる。つまり〈序詞〉は,一首の勝負のしどころ,個性の発揮のしどころであって,その点で修辞法の一つとはいえ,歌人たちがその開発,発明に多大の努力を費やしてきた,和歌の本質にかかわる重要な部分なのである。…

【枕詞】より

…これらはすべて神託などの呪術的な古代的発想法から展開してきたものなのである。枕詞と似た和歌の修辞に序詞(じよし)があって,両者はその長さの違いや文脈の性格の違いによって区別されているが,個々の例では区別のつきにくいものもある。本質を異にする両者が混雑を生じたものか,本質を同じくする両者が別々に発達したものか,両説があるが,古代人が枕詞と序詞とを明確に区別した形跡はない。…

※「序詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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