改訂新版 世界大百科事典 「虫塚」の意味・わかりやすい解説
虫塚 (むしづか)
虫塚の建立(こんりゆう)には次のようないろいろの動機がある。(1)害虫多発の際の供養のため,(2)虫送りの祈禱所を示すもの,(3)趣味や職業上,研究上などで多量に殺虫をした虫の供養,(4)特殊昆虫やその発生地を記念するもの,(5)このほか昆虫に関する歌碑や句碑を虫塚と呼ぶこともある。(1)は佐賀市嘉瀬町にある貞享2年(1685)の虫供養塔や,福井県小浜市にある明和9年(1772)の漸得塚(善徳とも書きクロカメムシの方言),石川県小松市の2基ある天保10年(1839)の虫塚などが有名である。(2)の例は単に虫塚,虫追い塚,実盛塚などと呼ばれ各地に現存する。(3)(4)は京都嵯峨(さが)化野(あだしの)の念仏堂の虫塚,千葉県下の大正12年(1923)の鳴虫供養塔,孫太郎虫を採集しはじめてから850年記念に建てられた宮城県白石市斎川の孫太郎虫碑(昭和年代であろう),上野寛永寺にある増山雪斎が虫を画くために集めた虫を埋めた虫塚などが有名である。また各地の農業試験場その他公園などに建てられた虫塚や虫供養塔は無数にある。(5)は江戸道灌山の鳴く虫の塚や山形県山寺の蟬塚などである。
→動物供養
執筆者:長谷川 仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報