普及版 字通 「蜃」の読み・字形・画数・意味
蜃
13画
[字訓] かい・はまぐり
[説文解字]
[字形] 形声
声符は辰(しん)。辰は蜃の象形で、その初文。蜃器は耕耨(こうどう)の器とされ、また蜃肉は祭事に呪的な意味をもつものとして用いられた。〔説文〕十三上に「雉(きじ)、に入りて、して蜃と爲るなり」とあり、大蛤(おおはまぐり)をいう。〔礼記、月令〕に「(季秋の月)(雀)、大水に入りて蛤と爲り、(孟冬の月)雉、大水に入りて蜃と爲る」、また〔夏小正〕に「九、~雀、に入りて蛤と爲り、~十、雉、淮に入りて蜃(はまぐり)と爲る」とあり、他に野・丹鳥が化するとするなど、異説も多い。蜃を神秘なものとする考えかたがあったのであろう。〔周礼、考工記、匠人〕に白蜃、〔周礼、秋官、赤(せきふつ)氏〕に蜃炭のことがみえ、それぞれ虫害を祓除するものとされた。卜文に(しん)の字形があり、震驚の意に用いる。辰が初文。蜃気楼は、蜃がはく気によって起こるものであるという。辰声の字は、おおむね蜃を用いる呪儀に関係がある。
[訓義]
1. かい、おおはまぐり。
2. はまぐり、はまぐりの貝をやいて作る灰、かきばい。
[古辞書の訓]
〔立〕蜃 ハマグリ 〔字鏡集〕蜃 オホハマグリ・ハマグリ・カヒ
[語系]
蜃・辰・()zjinは同声。は社肉。同族の間にを頒かつ礼があった。また軍行のときその祭肉を奉じて出征し、その肉はの形にかかれる。師旅の師は、卜文ではすなわち(し)の字を用いる。辰肉はこの形であったのであろう。振・賑tjinは同系の語。振は振救。賑は賑給の意。辰を用いるのは、もと魂振りとしての意味をもつ行為であったのであろう。
[熟語]
蜃雲▶・蜃衛▶・蜃灰▶・蜃気▶・蜃器▶・蜃景▶・蜃蛤▶・蜃市▶・蜃車▶・蜃牆▶・蜃竈▶・蜃台▶・蜃炭▶・蜃物▶・蜃氛▶・蜃路▶・蜃楼▶
[下接語]
海蜃・蛟蜃・潜蜃・白蜃・蜃・蜃・竜蜃・老蜃
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報