血圧異常における新しい展開

内科学 第10版 の解説

血圧異常における新しい展開(血圧の異常)

 高血圧は,患者数が約4000万人と最も頻度の多い生活習慣病である.脳血管障害,心臓病(心不全,心肥大,冠動脈疾患など),腎臓病,末梢血管障害の原因疾患として重要であり,その対策は心血管疾患の予防,治療のためにも必須となる.高血圧の成因に関する,遺伝子解析がアンジオテンシノーゲンやアンジオテンシン変換酵素ACE)の遺伝子多型に引き続き,全ゲノム関連解析(GWAS)によっても進められているが,いまだ不明で多遺伝子疾患と考えられる.近年,食塩感受性やレニン-アンジオテンシン系など昇圧系に関する遺伝子のエピジェネティックな面からの研究も展開されはじめている.また,腎交感神経活性亢進が,腎レニン-アンジオテンシン系活性亢進とともに,中枢神経系を刺激し,腎交感神経遠心路刺激を介して腎Na貯留やレニン-アンジオテンシン系活性により昇圧するという仮説が注目されている.腎交感神経アブレーションが治療抵抗性高血圧に良好な降圧効果を示し,治療面でも注目されている.
 高血圧治療は,エビデンスに基づいたガイドラインに沿って行われることが多い.わが国では日本高血圧学会の2009年のガイドラインが繁用されているが,2009年にESH/ESCの再評価があり,2011年に英国高血圧学会の新しいガイドラインが出された.2013年には米国のJNC8,ESH/ESCが改訂予定である.第1選択薬を現在の5薬剤から変えるのか,という議論に加え,心血管疾患,糖尿病,慢性腎臓病合併高血圧や,高齢者における高血圧の降圧薬選択と降圧目標などが国際的な議論になっており,わが国でも2014年にガイドラインが改定される予定である.さらに,家庭血圧の評価法についても,判定時間帯,測定回数,そして使用する血圧値の積算法など整理が必要となる.[島本和明]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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