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糖尿病 とうにょうびょう diabetes mellitus

12件 の用語解説(糖尿病の意味・用語解説を検索)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

糖尿病
とうにょうびょう
diabetes mellitus

血液中あるいは血漿中のブドウ糖が持続的に上昇している状態の疾患をいう。主として 15歳未満の子供がかかるインスリン依存型糖尿病 (IDDMと略す。I型糖尿病ともいう) と,40歳以上の成人がかかるインスリン非依存型糖尿病 (NIDDMと略す。

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

糖尿病

血糖値を下げる働きのある、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの作用が不十分で、血糖値が慢性的に高くなる症状。悪化すると人工透析治療が必要になる。ウイルスなどが原因で発症する1型糖尿病と、生活習慣などが原因で発症する2型糖尿病がある。厚生労働省国民生活基礎調査によると、県内の糖尿病患者数(2013年)は約31万8千人。01年と比べて約2・1倍に増えている。

(2016-04-22 朝日新聞 朝刊 埼玉・1地方)

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デジタル大辞泉の解説

とうにょう‐びょう〔タウネウビヤウ〕【糖尿病】

高血糖糖尿とが持続的にみられる慢性の病気。体内でぶどう糖エネルギー源として利用されるために必要なインスリンの不足によって起こる。のどの渇き・多尿・空腹感・倦怠感(けんたいかん)などの自覚症状があり、感染症動脈硬化白内障などの合併症を起こしやすい。25歳未満の若年者に発症する一型糖尿病、主に成人になってから発症する二型糖尿病などがある。→妊娠糖尿病

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百科事典マイペディアの解説

糖尿病【とうにょうびょう】

インシュリンの不足による糖代謝障害の結果,血糖値が高くなり尿糖の出る疾患。遺伝病ともいわれ,肥満,内分泌疾患などが原因とされる。インシュリンが欠乏状態にあって,毎日インシュリン注射が必要なインシュリン依存型と,食事療法運動療法,血糖降下薬の服用によってコントロールできるインシュリン非依存型に分けられる。
→関連項目異種間臓器移植かくれ肥満境界型糖尿病血液透析ケトン体高コレステロール血症高脂血症コルサコフ病小児成人病人工膵島膵移植早産断食療法日和見感染症頻尿耳鳴りメタボリックシンドローム老人病

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とっさの日本語便利帳の解説

糖尿病

インスリン作用の不足によって引き起こされる、糖代謝を主とする種々の代謝異常をきたす疾患。I型糖尿病は、膵臓のインスリン分泌細胞からの分泌量が減少することによって起こる。圧倒的に多いII型糖尿病は、インスリン分泌の相対的低下による疾患とされる。動脈硬化など様々な合併症をきたしやすい。

出典|(株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」
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栄養・生化学辞典の解説

糖尿病

 慢性的に高い血糖値を示し,多くの場合尿へ糖が出て,また糖を負荷したときに血糖値の復元が遅いなどの症状を示す疾病.

出典|朝倉書店
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生活習慣病用語辞典の解説

糖尿病

血糖を下げるインスリンが不足することにより持続的に高血糖がみられる慢性の病気です。ウイルス感染や自己免疫異常により起こるI 型と肥満や栄養過剰摂取によって起こるII 型、妊娠や他の病気によって一時的に起こる二次性の糖尿病に分類されます。

出典|あなたの健康をサポート QUPiO(クピオ)
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家庭医学館の解説

とうにょうびょう【糖尿病 Diabetes Mellitus】

◎糖尿病とは
◎インスリン不足と血糖値(けっとうち)の上昇
◎病気の経過と症状
◎糖尿病の原因と分類
◎糖尿病の診断と検査
◎糖尿病の合併症
◎糖尿病の治療

◎糖尿病(とうにょうびょう)とは
 平成9年度の厚生白書のなかで、厚生省(現厚生労働省)は生活習慣病という概念を提唱しました。これは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙(きつえん)、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義されており(公衆衛生審議会意見具申、1996年〈平成8年〉12月18日)、カロリーの過剰摂取と運動不足による肥満をきたす生活習慣と深くかかわっている糖尿病も、このなかに入っています。
 2002年の糖尿病実態調査によると、糖尿病の治療中、または検査で糖尿病が疑われる人は、740万人になります。これに境界型などの糖尿病予備軍を含めると、人口の約6分の1にあたる1620万人に上り、国民病ともいえる状況となっています。
 成人における有病率は、欧米の食習慣を有する日系アメリカ人の糖尿病有病率の高さからみて、現在の1.5倍程度まで増加する可能性があります。
 糖尿病には、若い人の発症が多い1型(インスリン依存型(いぞんがた))と、中年期以降の発症が多い2型(インスリン非依存型(ひいぞんがた))の2つのタイプがありますが、後者は、日常的な食べ過ぎ、運動不足などに起因する肥満とのかかわりが深く、生活習慣の改善により、発病を予防できる疾患だと考えられるようになってきています。

◎インスリン不足と血糖値(けっとうち)の上昇
 私たちは、摂取した食物を体内でぶどう糖のかたちに変え、それをインスリンというホルモンの力を借りてエネルギー源に利用して生命を維持し、活動しています。
 インスリンは、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるβ(ベータ)細胞(B細胞ともいう)から分泌(ぶんぴつ)されています。このインスリンというホルモンが、必要なだけ分泌されなかったり、あるいはなんらかの理由でインスリンが十分に作用できなかったときに、血液中のぶどう糖(血糖(けっとう))が利用・処理されず、その濃度が高まり(高血糖(こうけっとう))、尿の中にもぶどう糖(尿糖(にょうとう))が漏(も)れて排泄(はいせつ)されるようになります(図「前から見た膵臓の位置」図「膵臓の位置(横断面)」図「膵臓のしくみ」)。
 腎臓(じんぞう)で尿がつくられるとき、血中ぶとう糖は、糸球体(しきゅうたい)というところを通過して、いったん尿細管(にょうさいかん)中にもれて出てきますが、そこでほとんど全部が再吸収されてしまいます。しかし、この量が多すぎると、再吸収力がおよばず、尿中にぶどう糖がおりてくることになります。尿糖のおり始める時点の血糖値のことを、尿糖排泄閾値(にょうとうはいせついきち)と呼び、ふつうでは1dℓあたり160mg前後で、高齢になるほど、この値は高くなる(血糖値がより高くならないと、なかなか尿に糖がおりてこない)傾向があります。
 血糖値が持続的に高くなっている状態のことを糖尿病というのです。
 WHO(世界保健機関)は1985年に、糖尿病の基本的特徴を「慢性の高血糖状態」と明解に定義しました。
 今日では、一般的に「糖尿病は、インスリン作用の不足に基づいて代謝(たいしゃ)の変動が持続する疾患で、基本的な特徴は増加したブドウ糖を代謝する能力すなわち耐糖能(たいとうのう)の低下、慢性の高血糖である。罹患期間(りかんきかん)が長くなるにつれて特有な変性過程が進行し、しばしば最小血管症や神経障害を合併し、また動脈硬化(どうみゃくこうか)が促進される」と定義されています。

◎病気の経過と症状
 糖尿病は、軽いうちはほとんど自覚症状がありません。尿糖排泄閾値を超える高血糖が持続すると、尿が多く出る、のどが渇く、水・お茶・ジュースなどの水分を多く飲みたくなる、だるい、やせてくるなどの症状が出てきます。さらに進行すると、糖質代謝だけでなく、たんぱく質や脂肪、水やミネラルの代謝にも異常をきたしてきます。
 インスリン不足で糖質の利用ができなくなると、エネルギー源として脂肪が使われるようになります。脂肪が代謝されると、副産物として血中にケトン体というものがたまってきます。これが血液を酸性に傾け(この状態をケトアシドーシスという)、強い全身のだるさ、脱力感、吐(は)き気(け)などの症状が出てきます。
 病気がさらに進むと、意識がなくなる糖尿病性昏睡(とうにょうびょうせいこんすい)におちいり、死亡する場合もあります。
 血糖のコントロールが悪いまま10年ほどたつと、たいていの場合、毛細血管(もうさいけっかん)や細小血管という細かい血管に糖尿病特有の変化が現われてきます。目にくるのが糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせいもうまくしょう)、腎臓にくるのが糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)、そして神経栄養血管がおかされると、糖尿病性神経障害がおこってきます。
 また、加齢(かれい)現象としてもおこってくる、太い大血管の動脈硬化が、糖尿病のコントロールが悪いと、年齢より早く出現・進行してきて、狭心症(きょうしんしょう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳梗塞(のうこうそく)、下肢(かし)の壊疽(えそ)などの原因となります。白内障(はくないしょう)のような、加齢によっておこってくるものも、糖尿病では、早期に現われてきます。
 感染症に対する抵抗力も低下し、腎盂炎(じんうえん)や膀胱炎(ぼうこうえん)などの尿路感染症(にょうろかんせんしょう)、気管支炎(きかんしえん)や肺炎(はいえん)、肺結核(はいけっかく)などの呼吸器感染症、みずむしのような真菌(しんきん)感染症などもおこりやすくなります。
 今日では、医学の進歩により、糖尿病そのもので死亡することはほとんどなくなった、といってもよいほどですが、視力障害、尿毒症(にょうどくしょう)、心筋梗塞、脳卒中(のうそっちゅう)、神経障害などの合併症による死亡や障害を考えると、糖尿病による健康障害はけっして少ないものではありません。
 しかしながら、ありがたいことに、早期発見で、適切な治療(食事、運動、薬物)による良好な血糖コントロール状態を維持すれば、これらの合併症が予防され、健康な人と同じような生活を送ることができるのです。

◎糖尿病(とうにょうびょう)の原因と分類
 一口に糖尿病といっても、その成因、遺伝的背景、発症要因、インスリン分泌や作用の不足の程度、治療に対する反応などはさまざまで、これは、多様な内容をもつ疾患群と考えたほうがよいくらいです。
 日本糖尿病学会(1999年)によると、糖尿病は成因と病態の両面からつぎのように分類されます。
■1型糖尿病
 自己免疫機構(じこめんえききこう)や原因のわからないことで、膵島(すいとう)(ランゲルハンス島)β細胞が破壊され、インスリン分泌能が失われ、絶対的なインスリン欠乏におちいります。
■2型糖尿病
 インスリン分泌低下やインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)となります。
■その他の特定の機序、疾患による糖尿病
 遺伝子異常によるものと、膵外分泌疾患・内分泌疾患・肝疾患・感染症などにともなうものがあります。
妊娠糖尿病
 妊娠によって、耐糖能低下をひきおこします。
 病態による分類として、インスリン分泌の有無から、2つに分類されます。
①インスリン依存状態
 これは、インスリン注射療法を続けないと、ケトアシドーシスにおちいり、やがて死亡するタイプの糖尿病です。いいかえれば、生命の維持にインスリン注射が不可欠な糖尿病で、1型糖尿病と2型糖尿病の急性代謝失調の人におこります。
 10~20歳代に発症することが多いため、かつては若年(発症)型糖尿病とも呼ばれたことがありましたが、あらゆる年代層に発症しうることから、今日では使われなくなりました。また、インスリン依存型糖尿病とも呼ばれていました。
②インスリン非依存状態
 これは、インスリン分泌が低下する遺伝的素因があるうえに、過食、運動不足、肥満、老化などの環境因子が加わり、インスリン抵抗性となり、発症したタイプで、2型糖尿病の人におこります。
 30~40歳代以降の発症が多いことから、かつては成人(発症)型糖尿病、インスリン非依存型糖尿病と呼ばれていました。
 日本人の糖尿病の95%がこのタイプです。

◎糖尿病(とうにょうびょう)の診断と検査
 口渇(こうかつ)(口の渇き)、多飲(たいん)、多尿(たにょう)などの症状があっても、糖尿病だとは断定できません。高(こう)カルシウム血症(けっしょう)のときも、また単なる心因性のときにも、同じ症状がみられます。
●尿糖検査(にょうとうけんさ)
 試験紙を尿につけるだけで、尿糖の有無や多少がわかり、しかも採血(さいけつ)のような痛みやわずらわしさがなく、自分でできるため、便利な検査法です。
 ふつうでは、尿糖排泄閾値以下の血糖値のときには、尿中にぶどう糖はおりてきません。そのため、空腹時などでは、軽症糖尿病があっても見逃されてしまいます。なるべく食後2時間くらいの尿で検査するのがよいでしょう。
 逆に、尿糖が陽性でも、かならずしも糖尿病とはかぎりません。腎性糖尿症や甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、胃切除後などでもみられるからです。
●血糖検査(けっとうけんさ)
 糖尿病の診断をつけるのには、血糖検査が不可欠です。糖尿病の症状があって、朝食前の空腹時血糖が1dℓあたり126mg以上あったり、食後あるいは任意の時間で200mg以上あれば、糖尿病と診断します。
●ぶどう糖負荷試験(とうふかしけん)
 もっとも確実な検査法といえます。朝食抜きで、午前中に、75gのぶどう糖を溶かした水を飲み、その直前、および2時間後に採血し、ぶどう糖濃度を調べます。
 判定は、(表「75gぶどう糖負荷試験の判定基準」)に示した日本糖尿病学会の基準にしたがいます。
 血中インスリン濃度も測定すると、インスリン分泌の程度もわかります。
●グリコヘモグロビンA1c(HbA1c
 1回の採血で、過去1~2か月間の血糖の平均値のような値がわかるため、たいへん便利で有用な検査です。

◎糖尿病(とうにょうびょう)の合併症
 糖尿病の合併症には、糖尿病に特有なものと、特有でないけれども、糖尿病患者さんに多いものとがあります。
 合併症の原因は、糖尿病の治療が不十分であったり、発症してからの経過が長く、高血糖の状態が長く続くことにあります。血管、とくに細かい血管の壁に変性をきたし、内腔(ないくう)が細くなったり、閉塞(へいそく)したりするために、いろいろな臓器に障害がおこってきます。
■糖尿病性網膜症(とうにょうびょうせいもうまくしょう)
 眼底(がんてい)の、カメラでいえばフィルムにあたる網膜に酸素や栄養を送っている毛細血管(もうさいけっかん)の病変で、つまったり破れて出血したりして視力障害がおこり、ひどくなると失明(しつめい)するこわい合併症です。
 日本の成人の失明原因のトップはこの病気で、年間約5000人の糖尿病患者さんが視力障害を理由に、身体障害者手帳の交付を受けています。
 網膜症は進行の程度により、3段階に分類されます。いちばん初期の段階は単純網膜症で、視力についての自覚症はほとんどなく、小さな点状出血や白斑(はくはん)などの軽い病変が網膜内にとどまっている程度です。
 血糖のコントロール不良状態が続くと、症状は進み、軟性白斑(なんせいはくはん)や静脈の異常、線状出血(せんじょうしゅっけつ)などの病変が加わった前増殖網膜症(ぜんぞうしょくもうまくしょう)となります。
 さらに進行したのが増殖網膜症で、本来はなかったところに新たな毛細血管(新生血管)ができ、網膜より前部の硝子体(しょうしたい)にまで侵入してきます。
 この新生血管はたいへんもろく、ちょっとした衝撃があったり、血圧が上がると、すぐに破れて出血をおこし、視力障害、ひいては失明にまで至ることがあります。また、この出血の後には、網膜剥離(もうまくはくり)がおこりやすく、これも失明の原因となります。
■糖尿病性腎症(とうにょうびょうせいじんしょう)(糖尿病性腎糸球体硬化症(じんしきゅうたいこうかしょう))
 腎臓は、血液を濾過(ろか)して原尿(げんにょう)をつくる糸球体と、からだに必要な栄養分を再吸収する尿細管からなるネフロン(腎単位)というものが約200万個集まってできた臓器ですが、糖尿病では、持続的な高血糖から、糸球体の毛細血管に結節(けっせつ)や肥厚(ひこう)などの糖尿病に特有の変化がおこってきます。その結果、濾過機能が低下し、排泄されるべき老廃物が血液中に増え、尿毒症となり、生命が危険にさらされます。1994年に日本で新たに透析(とうせき)導入を行なった患者数2万4059人のうち、7376人(30.7%)が糖尿病性腎症で、この比率が年々増加しています。
 血中の尿素窒素(にょうそちっそ)やクレアチニンが上昇するより以前に、たんぱく尿がより敏感な指標となります。最近では、尿たんぱくが陰性でも、さらにより鋭敏な指標として、尿中微量アルブミンの測定ができるようになりました。
 これが基準値よりはみ出し始めたころから、厳格な血糖コントロールと、もし高血圧があればそのコントロールも合わせて行なえば、糖尿病性腎症も予防ないし進展防止ができます。
■糖尿病性神経障害
 神経系は、中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい)(脳および脊髄(せきずい))と末梢神経系(まっしょうしんけいけい)に分けられ、後者はさらに体性神経系(たいせいしんけいけい)(知覚神経(ちかくしんけい)および運動神経)と自律神経系(じりつしんけいけい)(交感神経(こうかんしんけい)および副交感神経)に分けられます。
 糖尿病では、末梢神経系の障害が多く、それには、代謝障害と微小血管障害による循環障害とが関与していると考えられます。末梢神経の細胞は、長い軸索突起(じくさくとっき)(神経線維)をもち、その周囲を髄鞘(ずいしょう)とシュワン細胞が取り囲んでいます。糖尿病では、この軸索と髄鞘に変性と脱落がおこり、おかされた神経やその部位によって、多彩な神経症状を示します。
 多発性神経障害が頻度的にもっとも多く、知覚障害のほうが、運動障害よりも多くみられます。しびれや痛みが四肢(しし)(手足)末端から始まり、左右対称性に広がっていき(靴下型(くつしたがた)、手袋型(てぶくろがた))、通常は、まず足先や足底部に症状が出現してきます。
 単一神経障害として、大腿(だいたい)(太もも)や腓骨(ひこつ)・尺骨(しゃっこつ)・正中(せいちゅう)・橈骨神経(とうこつしんけい)がおかされやすく、それぞれの神経支配領域に疼痛(とうつう)、脱力、知覚異常などが出てきます。動眼神経(どうがんしんけい)や外転神経(がいてんしんけい)も多く、外転筋(がいてんきん)まひ、複視(ふくし)、眼瞼下垂(がんけんかすい)などの症状がみられます。
 自律神経障害は見過ごされやすいのですが、糖尿病にかかっている期間が長くなると、多彩な症状をともない、患者さんに苦痛を与え、生活に支障をきたすほどになることもあります(表「糖尿病性自律神経障害のWHOの分類」)。

◎糖尿病(とうにょうびょう)の治療
 膵β細胞(すいベータさいぼう)のインスリン分泌能を永久に完全に回復させる治療法がまだ見つかっていない現在では、完治して糖尿病がなくなってしまったという状態にすることはできません。
 糖尿病治療の目的は、患者さんが口渇、多飲、多尿、からだのだるさなどの自覚症状から解放され、視力障害その他の合併症を防止し、健康な人と同じように日常生活、社会生活を営むことができるようにすることです。
 それには、患者さん自身が自覚症状の有無にかかわらず、糖尿病の正しい知識をもち、治療目的をよく認識し、根気よく毎日の治療を続けることがもっとも大事です。
食事療法
 これは、糖尿病治療の基本であり、これなくしては治療の成功はありえません。各人の年齢、性別、標準体重、体格などから、その人の日常社会活動を維持するのに必要な総エネルギー量と、適正な栄養素配分を決めたのが糖尿病食で、これは、患者でない人にとっても理想的な健康食といえます。
 日本糖尿病学会の『糖尿病食事療法のための食品交換表』にしたがって、献立、秤量、盛りつけなどを栄養士の指導を受けながら、毎日の生活のなかで実践していくことがたいせつです。
 具体的には、標準体重を算出します。いろいろな計算式がありますが、最近では、つぎのようなWHO方式がよく用いられます。
 {身長(m)}2×22(男)
 {身長(m)}2×21(女)
 たとえば、身長162cmの場合は、
 男性なら 1.62×1.62×22=57.7Kg
 女性なら 1.62×1.62×21=55.1Kg
となります。
 ふつうのデスクワーク程度の仕事の人や主婦では、この標準体重に30をかけると必要カロリー数が算出されます。標準体重をオーバーしていて、減量する場合は、25をかけます。前述の男性では、57.7×30で1730kcalないし57.7×25で1440kcalとなります。
 日常の活動を支えるための必要カロリーをバランスよくとるのが原則で、少なすぎる食事は栄養失調をきたしますし、絶食療法は糖尿病を悪化させますので、してはならないことです。
●運動療法
 運動は、糖代謝や脂質代謝を改善し、肥満の是正や防止に役立ち、食事療法とともに、糖尿病治療の基本となるものです。筋肉のエネルギー源は、安静時には脂肪組織から放出される遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)ですが、中等度の運動を始めると、最初は筋肉のグリコーゲンがおもに利用され、10分以上たつと、今度は血中のぶどう糖がおもなエネルギー源として使われるようになります。運動が2時間を超えると、ぶどう糖よりも遊離脂肪酸の利用のほうが主になります。
 肥満があると、インスリン感受性が低下し、インスリンの効きにくい状態におちいっていますが、運動すると、これが改善されます。食後に運動すると、食後の高血糖が改善されたというデータもあります。
 肥満体のままでジョギングしたり、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)があるのに長時間歩いたりすると、よく膝(ひざ)や足首の関節を痛めます。また、狭心症や心不全のある人が過度な運動をすると、胸痛(きょうつう)をきたしたり、心不全を悪化させてしまいます。
 糖尿病の運動療法としては、月に1~2回のゴルフとか、週末の激しいテニスなどよりも、毎日の規則正しいルーチンに組み込めるもので、「ひとりでも、いつでも、どこででも」できる運動が理想的です。費用もかからない、手軽なお勧め運動療法の処方箋(しょほうせん)をつぎに提示します。
 歩数計を毎朝装着し、朝夕の通勤に1~2駅手前で降りて、速足で30分歩き、会社では仕事を思いつくたびにこまめに足を運び、エレベーター、エスカレーターには乗らない主義を貫き、帰宅して夕食後に歩数計をチェック。男性なら1万歩に満たない分を家のまわりを散歩してくる。閉経後(へいけいご)の女性なら6000歩までにとどめておきます。
●薬物療法
 食事療法と運動療法を十分に実行し、標準体重まで、あるいはせいぜい10%増し以内にまでもってきて、なおかつ、グリコヘモグロビン[1-03-33-2]が7.2%を超えている場合には、糖尿病合併症を予防するため、薬物療法を行なうべきです。
 インスリン依存状態の場合は、インスリン療法のほかに選択の余地はありません。インスリン非依存状態については、適用をまちがわないような薬剤の選択が必要です。
 薬物療法については、患者さんの状態をみて主治医が決めるべきもので、患者さんが勝手に決めるわけにはいきません。

出典|小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

食の医学館の解説

とうにょうびょう【糖尿病】

《どんな病気か?》
〈合併症がこわい糖尿病は、1に食事、2に運動で改善〉
 生活習慣の変化とともに増加し、生活習慣病の代表ともいえるのが、糖尿病(とうにょうびょう)です。昭和40年の数字とくらべると、糖尿病受療率は外来患者数で約5倍におよんでいます。現在では、糖尿病が強く疑われる人(治療中を含む)が690万人、さらに可能性を否定できない人とあわせると1370万人にもなります(厚生(現厚生労働)省「患者調査」平成10年)。
 このように“疑われる”“可能性を否定できない”と表現されるのは、実際に、初期の段階では自覚症状がないからです。糖尿病は、健康診断などの際に、血糖値が高いことではじめて疑いが生じることがほとんどなのです。
 ある程度症状が進行すると、のどがかわく、だるい、眠いなどの症状を感じるようになり、さらに進行すると体重減少、全身のかゆみ、視力の低下などがみられます。そしてもっともこわいのは、長期間血糖値が高い状態が続くと、糖尿病性の網膜症(もうまくしょう)、腎症(じんしょう)、神経障害(しんけいしょうがい)など、重大な合併症を引き起こしてしまうことです。
 糖尿病は、インスリンという、細胞内に糖を取り込み、血糖値を下げる作用のあるホルモンの作用不足がおもな原因です。そのため、糖尿病の改善、または予防には、インスリンというホルモンの分泌(ぶんぴつ)をきちんと機能させる必要があります。
 その方法としては、「1に食事、2に運動」です。食事については次の項でふれるとして、運動は、ほかの生活習慣病同様、適度な運動レベルで20~30分持続できる運動を、週に2~3回以上、計画性をもって持続させることがたいせつです。
《関連する食品》
 糖尿病の改善には、食事療法が第一です。そのポイントは次のとおり。
●摂取カロリーの制限
●バランスのよい栄養配分
 摂取カロリーの計算は年齢、性別、身長、体重、運動量などで決められますが、健康な人の適正エネルギー量の算出は「生活習慣病とは?」の適正エネルギーの簡易算出法を参照してください。また、糖尿病では低カロリー食が基本です。それだけに、栄養バランスにはより注意が必要です。糖尿病では糖質を制限すればよいと考える人が多いようですが、たんぱく質、脂質、糖質といった3大栄養素は、過不足なく摂取しなければなりません。そのうえで、糖尿病に効果のある食品を摂取しましょう。
 通常、糖尿病と診断されると、1日の摂取エネルギーが、1400から1600kcalと、きびしい食事制限をしなければならなくなります。
 以下に示す食品交換表は、人間が必要とする栄養素を6つのグループ(表1~表6)にわけ、それぞれからバランスよく食べることで、過不足なく栄養をとれるようにくふうされたものです。
 このなかから、1単位80kcalで計算して、1日の食事の献立を考えることが、糖尿病食の基本です。
<糖尿病の人のための食品交換表>
 糖尿病の食事療法は、特別な食事で病気を治すことではなく、「過食を避け、偏食せずに、毎日規則正しい食事をする」ということです。
 食事療法の原則は2点あり、第1に、適正な体重を保つのに必要な量の食事を食べ、余計に食べすぎないことであり、この適正量は患者さんの年齢、性別、身長、体重、日々の生活活動量などによってそれぞれ異なるので、主治医に決めてもらう必要があります。
 第2に、健康な生活をするために必要な栄養素(糖質、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)や食物繊維などが不足しないように、バランスのよい食事をとることです。糖尿病だからといって食べてはいけない食品はとくになく、適正な量を食べることが重要です。
 主治医は、患者さんが1日に食べる食事の適正な量(総エネルギー量)を指示します。これを1日の指示エネルギーといいます。そして、この指示エネルギー量のなかで1日にどんな食品をどれだけ食べればよいか、さらに1日3回の食事にそれをどのように配分すればよいかを、食品交換表を用いて指示します。
1.日常よく食べる食品が、どの表にのっているか、知っておくと便利です。
2.同じ種類の食品でも、含まれている栄養素の種類や量が大きくちがう場合には、他の表にのっていることがあります。
注1:食品の交換はかならず同じ表の食品のなかで行う。
注2:主治医は、1日の指示エネルギー量を1日に何単位と指示する。(例:1日20単位と指示されたときは「20単位×80(1単位のカロリー)=1600kcal」となる。
●6つの食品グループ(6つの表)
おもに糖質を含む食品
表1 ご飯 うどん 食パン スパゲッティ ジャガイモ
表2 イチゴ スイカ ミカン レモン メロン
おもにたんぱく質を含む食品
表3 マアジ クルマエビ メザシ くんせいイカ 豚肉
表4 牛乳 ヨーグルト スキムミルク
おもに脂肪を含む食品
表5 油 バター アーモンド ベーコン アボカド
おもにビタミン、ミネラルを含む食品
表6 カボチャ キュウリ キャベツ ナス ワカメ
●いろいろな食品の1単位にあたる量
表1  ご飯(55g) 小さい茶わん軽く半杯
   食パン(30g) 1斤6枚切りの約半分
   うどん〔干し〕(20g)
   ゆでうどん(80g)
表2  リンゴ〔皮、芯を含む〕(180g)
   リンゴ〔皮、芯を除いたもの〕(150g)
表3  タイ〔頭、骨、内臓付き〕(200g)
   タイ〔切り身1切れ〕(80g)
   豚肉〔もも〕(60g)
   とうふ〔木綿〕(100g:1/3丁~1/4丁)
表6  野菜いろいろとりあわせて(300g)
   ピーマン ニンジン サヤインゲン ブロッコリー
●朝食・昼食・夕食・間食への配分の原則
第1の食品  穀物、イモなど
第3の食品  魚介、肉、たまご、ダイズ製品など
第6の食品  野菜
以上は、朝食・昼食・夕食にだいたい均等に配分します。
第5の食品  油脂、調味料(味噌、砂糖など)
以上は、その日の料理にあわせて、朝食、昼食、夕食にわけて使います。
第2の食品  くだもの
第4の食品  牛乳
以上は、なるべく午前や午後の間食としてとるようにします。
(日本糖尿病協会・文光堂『糖尿病食事療法のための食品交換表第5版』日本糖尿病学会編より引用)
 糖尿病の食事は医師、栄養士の指導のもとでの正確なカロリーコントロールが絶対です。外食は、知らないうちに多くのカロリーをとってしまうことがあります。十分注意しましょう。あわせて、積極的に有酸素運動をすることで、カロリー消費につとめましょう。以下に、運動による消費カロリーの目安をのせておきます。
<運動消費カロリーの比較>
運動:歩行(100m/分)
1時間あたりの消費カロリー:200~300kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:30~45分

運動:速歩(120m/分)
1時間あたりの消費カロリー:300~400kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:23~30分

運動:かけ足
1時間あたりの消費カロリー:400~900kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:10~23分

運動:サイクリング
1時間あたりの消費カロリー:140~350kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:26~60分

運動:水泳(軽い)
1時間あたりの消費カロリー:350~800kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:10~26分

運動:サッカー
1時間あたりの消費カロリー:300~900kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:10~30分

運動:テニス
1時間あたりの消費カロリー:200~500kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:18~45分

運動:自転車(18km/時)
1時間あたりの消費カロリー:200~350kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:30~45分

運動:野球
1時間あたりの消費カロリー:150~350kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:26~60分

運動:バスケット
1時間あたりの消費カロリー:300~600kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:15~30分

運動:スキー
1時間あたりの消費カロリー:200~600kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:15~45分

運動:ボウリング
1時間あたりの消費カロリー:150~200kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:45~60分

運動:卓球
1時間あたりの消費カロリー:200~450kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:20~45分

運動:エアロビクス
1時間あたりの消費カロリー:400~600kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:15~30分

運動:ジョギング
1時間あたりの消費カロリー:200~300kcal
1kgやせるのに必要な運動持続時間:30~40分
〈硫化アリル、カテキンが血糖値を下げる〉
○栄養成分としての働きから
 血糖値の上昇を抑える働きのある栄養素としては、硫化(りゅうか)アリルとカテキンがあります。硫化アリルはタマネギに多く含まれ、とくに生食がより効果的です。また、カテキンは緑茶に含まれており、緑茶を積極的に飲む習慣をつけるといいでしょう。直接血糖値のコントロールには働きかけをしませんが、小腸からの糖分の吸収を抑制するのが、ギムネマ茶などから摂取できるギムネマ酸です。
 ゴボウやこんにゃくなどの食物繊維も、糖質や脂質の吸収速度を抑え、血糖値の上昇を緩和する作用があります。基礎代謝を高めるために、ビタミンやミネラルもたっぷりとりましょう。ピーマンやシシトウなどに含まれるビタミンCは、脂肪の代謝を促進し、シイタケに含まれるビタミンB6やミネラル、ワカメ、コンブに含まれるミネラルも有効です。
○注意すべきこと
 いくら摂取カロリーや栄養バランスに気をつけても、不規則な食習慣では意味がありません。食事の回数を1回減らすと、1回分の摂取量がふえ、著しく血糖値が上昇してしまいます。1日3食、きちんと食事をすることと、よくかんでゆっくり食べることがたいせつです。
 また、糖尿病を予防するには、周囲の人に食事療法開始を告げる、自分の摂取カロリー量をつかむ、自分の数値を視覚化する、1日カロリー10%カット、飲酒は自分の意志の強さと相談を、午後9時をすぎたら食べない、などの注意が必要です。

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世界大百科事典 第2版の解説

とうにょうびょう【糖尿病 diabetes mellitus】

膵臓ホルモン,なかでもインシュリンの作用不全の結果生じる代謝異常状態をいう。代謝異常とは,栄養物の分解により生体の活動を支えるエネルギーを産生し供給する過程が円滑に運行されないことである。代謝異常の影響はほとんど全身の臓器・組織,血管・神経系に及び,その範囲,程度,進行具合はさまざまであるが,糖尿病の特徴をとりだせば次のようである。(1)種々の遺伝因子と種々の環境因子の組合せで発症する。(2)共通してインシュリンの欠乏,あるいはその作用を阻害する諸因子の過剰,または作用の発現機構に異常がある。

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大辞林 第三版の解説

とうにょうびょう【糖尿病】

持続性の高血糖と尿中への糖排出を特徴とする症候群。インシュリンの不足による代謝障害で,遺伝的素因に肥満・感染・妊娠などの誘因が重なり発症。成人期後半に多い。普通,初期には症状が見られず,進むと多尿・糖尿・多飲・多食・全身倦怠けんたいなどの症状が現れ,網膜症・腎症・神経症・動脈硬化症などを併発,重症では昏睡こんすい・脱水症を起こす。食餌しょくじ療法,運動療法,インシュリン注射が有効。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

糖尿病
とうにょうびょう
diabetes mellitus

膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンが不足するためにおこる代謝異常に基づく疾患で、次のような特徴をもっている。発病には遺伝的素因が強く、発症は急激に発生するものもあるが、多くは徐々に長い経過をとって悪化していく。治療しないで放置すれば糖尿病性昏睡(こんすい)に陥り死亡する。また食事療法を基礎とした適切な治療を行えば、正常の状態に改善することができるが、放置すれば後述するような種々の合併症をおこして生命に危険をもたらす。[高野加寿恵]

原因

遺伝とはあまり関係なくおもに自己免疫との関連で膵臓の機能が衰えておこるとされている1型と、遺伝的素因が強い2型とに分けられる。1型は治療にどうしてもインスリンを必要とする、インスリン依存状態であり、糖尿病患者の約1割を占める。2型は40歳以上の人に多く発症するもので、糖尿病患者の約9割を占める。食事療法や内服薬によって治療が行われるので、インスリン非依存状態が多く、肥満、過労、ストレス、手術、他の疾患の発症、妊娠などがこのタイプの発病を促す引き金となる。[高野加寿恵]

症状

人によってかなり違うが、病気の程度が軽い場合には症状がない。自覚症状のなかでもっとも多いのは、のどの渇き(口渇)である。茶や水を多量に飲むようになり、ひどい場合は夜中にのどの渇きで目覚め、やかん1杯の水を飲んでいた例もある。次に多いのは多尿である。水分を多くとるようになるとともに尿の回数が増え、1回の尿量も多くなる。健康人の1日の尿量は1.5リットル前後であるが、糖尿病では3リットル以上になる。多尿は昼間にはあまり気づかないが、夜中に何回もトイレに起きるようになると異常に気づく。また、糖尿病になると、体がだるく(全身倦怠(けんたい)感)疲れやすくなる。なお、糖尿病は肥満者に多く、糖尿病患者の大部分は過去に太っていた経験がある。肥満で内臓脂肪が蓄積すると、インスリンの血糖低下作用が弱まり、糖尿病になりやすくなるので、検査を受ける必要がある。また病気が重くなると、反対にやせてくる。いくら食べてもどんどんやせていくのは、糖尿病が重症であることを意味する。一般に、やせていく糖尿病は太っている糖尿病より重症である。以上述べた症状は糖尿病の特徴的症状で、次に合併症を伴ったときにみられる症状について述べる。
 糖尿病があるためにおこりやすい合併症にはまず脂質異常症があり、血液中のコレステロールや中性脂肪が増えてくる。また細菌感染に対する抵抗力が弱くなるので、肺結核、肺炎、腎盂(じんう)炎などにかかりやすくなるほか、項部(うなじ)に(せつ)(おでき)ができやすくなったり、皮膚がかゆくなり、また歯周炎がひどくなったりする。女性では真菌の一種であるカンジダの感染によって陰部がかゆくなることもある。なお、糖尿病のない人に比べると、動脈硬化がおこりやすく、心筋梗塞(こうそく)になる率が約4倍という報告もあり、また糖尿病では脳出血より脳血栓が多い傾向がある。
 次に糖尿病に特有な合併症について述べる。これには糖尿病性の神経症、網膜症、腎症の三つがある。
(1)糖尿病性神経症 発病初期からでもみられる合併症で、痛みや寒暖を感じる知覚神経が侵されやすく、そのため手足の指先がしびれたり、頑固な神経痛がおこる。神経痛のために安眠が妨げられることもあり、まれには目の運動神経の麻痺(まひ)で物が二つに見えたりすることもある。内臓神経が障害を受けると、弛緩性膀胱(しかんせいぼうこう)といって膀胱に多量の尿がたまり排尿がうまくできなくなることがある。これらのほか、神経症によって下痢や便秘、インポテンス、起立性低血圧や発汗異常などもみられる。なお、神経症は、代謝異常の影響と神経系に分布する血管の動脈硬化によって神経細胞や神経組織が変化しておこるという。
(2)糖尿病網膜症 糖尿病に特徴的な血管障害が眼底の網膜におきたものをいう。症状が進むと失明に至る重大な合併症の一つである。高血糖の状態を5年以上も放置すると、徐々に網膜の毛細血管に出血による変化が現れてくる。初期の小出血の段階では自覚症状がなく、検査も受けずに無治療で放置しがちであるが、眼底検査は初めのうち年一度、異常があれば3か月に一度の割で受けるようにする。
(3)糖尿病性腎症 糖尿病に特徴的な血管障害が腎臓の糸球体を中心にしておこったものをいう。糖尿病を十分に治療しないで15年以上経過すると、腎臓の血管が侵されて尿にタンパクが出るようになる。尿にタンパクが出ても腎臓の機能が正常に働いている間は問題はないが、機能が低下し始めるとだんだん悪化して尿毒症になり死に至る。しかし、発病とともに治療を継続すれば糖尿病性腎症は予防できる。
 なお、合併症ではないが、糖尿病が重症になると糖尿病性昏睡という状態になることがある。体内でインスリンが不足すると糖質の利用が阻害されて高血糖となり、また脂肪が分解されて生ずるケトン体が増え、血液が酸性となって意識が混濁し、昏睡に陥る。毎日インスリンの注射を必要とする人が注射をしなかったり、糖尿病のあることを知らないで手術を受けたり、肺炎、腎炎、膀胱炎などの感染症にかかったりすると、糖尿病性昏睡がおこる。糖尿病のあることが疑われていて治療をまだ受けていない人や治療を中止している人が、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛を訴えたときは、糖尿病性昏睡の前兆である可能性も考慮して対処することが必要である。[高野加寿恵]

検査と診断

体重減少を伴った口渇、多飲多尿、多食、倦怠感があれば、糖尿病が疑われるので検査が必要となる。まず尿検査で糖が出ておれば疑いはさらに濃くなる。しかし、ときに腎性糖尿といって腎臓での糖の排泄閾値(はいせついきち)が下がっているために、血中の糖が高くなくても尿糖がみられることがある。これと区別するために、血液中のブドウ糖の値(血糖値)を基礎値と負荷後の値で調べることがある。すなわち、空腹時血糖値が1デシリットル中126ミリグラム以上であったり、またそれ以下でもブドウ糖を75グラム含む水を飲んだ後の血糖が1デシリットル中200ミリグラム以上であれば糖尿病型と判定する。この負荷試験のとき、血中のインスリン濃度を測定する反応をみるが、糖尿病では低反応である。グルコースのついたヘモグロビンA1cが測定できるが、この値は1、2か月前の血糖の状態を示すものとして、糖尿病のコントロールの指標としても使われている。
 糖尿病の診断がついたら、重症度や合併症のチェックをする。糖尿病性の網膜症や腎症を検索するために眼底検査を行うほか、尿タンパクや尿糖の量を測定する。心臓や肺にも変化がないかどうかを調べるため、血圧、心電図、胸部X線検査も行う。また血液中のコレステロールや中性脂肪が高くないかどうかを調べたり、血液中の理化学的検査を行う。体重測定も重要な検査の一つである。[高野加寿恵]

治療

代謝の異常状態を正常にすること、合併症を予防または発症を遅らせることが糖尿病の治療目的である。食事療法が基本となるが、食事療法を行っても糖尿病がまだ十分にコントロールされない場合は、経口糖尿病治療薬やインスリン注射薬を使用する。適当な運動は代謝の改善にたいせつである。よいコントロールとは、早朝空腹時血糖値が1デシリットル中120ミリグラム以下、食後2時間の血糖値が同じく170ミリグラム以下、ヘモグロビンA1c値が6.5%未満であり、しかも合併症がなく、体重が標準体重範囲にあることで、これを一生続ければ健康人とまったく変わらない社会活動、社会生活を行いながら天寿を全うすることが可能である。
 食事療法は、何を食べてはいけないといった制限をするものではなく、その人の標準体重から計算されたカロリーを摂取することが目的である。目安としては、肥満者の場合でその人の標準体重1キログラム当り20~25キロカロリー、肥満していない軽労働者では同じく30キロカロリー、中等度労働者では同じく35~40キロカロリー、重労働者では同じく40~45キロカロリーである。たとえば、男性で身長165センチメートル、体重80キログラムの軽労働者では標準体重が60キログラムとなるので、やせるために1キログラム当り20~25キロカロリー、1日の摂取カロリーは1200~1500キロカロリーとなる。与えられた総カロリーを、糖質、タンパク質、脂質の三大栄養素からバランスよく配分して摂取する。実際には栄養士の献立指導を数回受けるとよい。ビタミンやミネラル類も不足しないよう注意する。食事指導には、日本糖尿病学会編『糖尿病治療のための食品交換表』が活用されている。なお、アルコール飲料については1日2単位(160キロカロリー)までは許可されるが、だいたい、ウイスキーならシングル2杯、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならワイングラス2杯程度である。しかし、薬物療法併用者の場合は、合併症がなくても原則として禁酒すべきである。
 経口糖尿病治療薬は、40歳以後に発病した2型糖尿病に有効で、食事療法を十分に行っても血糖値が下がらない場合に服用する。代謝の乱れを正常化させ、合併症や進行も阻止することができるが、薬が効果を発揮しているかどうかのチェックを受けながら服用することが必要である。
 インスリン療法を行う場合も、食事療法は守る必要がある。この療法は、インスリン依存性の糖尿病の人をはじめ、インスリン非依存性糖尿病の人でも、細菌感染のある場合、手術時、糖尿病性昏睡に陥ったとき、妊娠時などにも行われる。1981年(昭和56)以後インスリンの自己注射が認められるようになったので、患者自身もインスリンについてある程度の知識をもつことが必要になってきた。糖尿病に対するインスリン注射は、体内のインスリンの不足を補う一種の補充療法であるから、毎日続けて主治医の指示したインスリンを注射しなければならない。注射部位は同じ場所ばかりせず、大腿(だいたい)部、腕、腹部、臀(でん)部に3センチメートルずつ間隔を置いて毎日違った場所に注射する。とくに低血糖に注意すべきで、インスリンの量を間違えたり、インスリンの注射をして食事をしなかったり、運動が過剰になったりすると、低血糖症状が現れる。万一、低血糖症状(飢餓感、脱力、冷汗、振戦など)がおこった場合は、砂糖水を飲んだりして昏睡に陥らないように処置する。
 適当な運動をすると、筋肉細胞のブドウ糖摂取が容易になり、インスリンの使用が節約されて体内の代謝がうまく営まれるようになる。心臓、腎臓、肺に疾患のある人や網膜出血がおきたばかりの人は運動を避けるべきであるが、それ以外の人は全身の筋肉を平均に動かすような運動や労働を毎日一定時間行うことは、糖尿病をよくする一つの補助的治療法となる。
 合併症に対しても、それぞれ次のような治療法がある。神経症が強い場合には、ビタミンB1、B2、B12などが有効なことがある。網膜に出血斑(はん)がみられた場合には、出血した血液が早く吸収されるように、強い光を当てて出血部位を焼いて止血する光凝固療法によって失明を食い止めることができる。腎症が進行すると尿毒症になるが、この場合には血液透析によって治療する。
 生活上の注意としては、重大な合併症がない限り、入浴、性生活、スポーツ、労働などに制限を加える必要はない。糖尿病の女性が妊娠するには、次のような注意が必要となる。すなわち、よくコントロールされている場合には妊娠、出産は可能であり、新生児にも異常はない。しかし、糖尿病のあることを知らないで治療もせずに妊娠した場合は、子供に形態異常がおこる確率が高く、出産まぎわに母体内で突然死することもある。また、母親も糖尿病性昏睡に陥ることさえある。抜歯や手術も糖尿病のコントロールがよければ受けられる。糖尿病では動脈硬化症や神経症によって足先の血液循環が悪くなるため、足に切り傷、やけどなどをすると壊疽(えそ)を生じやすく、切断を余儀なくされることもあるので、足はいつも清潔にしておくことがたいせつである。[高野加寿恵]
『吉利和監修・平田幸正編『最新看護セミナー 糖尿病ハンドブック』(1980・メヂカルフレンド社) ▽阿部正和ほか著『糖尿病――新しい考え方からマネジメントの実際まで』第2版(1983・医学書院) ▽平田幸正著『糖尿病の正しい知識 改訂版』(1992・南江堂) ▽大阪大学医学部附属病院編『やさしい糖尿病の自己管理』改訂3版(2000・医薬ジャーナル社) ▽河津捷二監修者代表『これだけは知っておきたい糖尿病』(2000・総合医学社) ▽日本糖尿病学会編『糖尿病食事療法のための食品交換表』第6版(2002・文光堂) ▽東畑朝子監著『糖尿病最新カロリーハンドブック』(2003・池田書店) ▽西東京糖尿病教育研究会編『患者のための糖尿病読本』2003年版(2003・桐書房)』

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世界大百科事典内の糖尿病の言及

【インシュリン】より

…また82年,ヒトホルモンとして初めて遺伝子工学の技術によって合成された。インシュリンは,その作用不足によって起こる糖尿病の主治療薬として,ひろく用いられている。哺乳類のインシュリンは,分子量約5700,アミノ酸残基51個のポリペプチドで,21個と30個の,それぞれA鎖,B鎖とよばれる2本のポリペプチドからなり,二つのS―S結合によって結ばれている。…

【運動失調症】より


[脊髄癆性失調症tabetic ataxia]
 関節位置覚,運動覚などの深部感覚の障害によって生ずるものであり,深部感覚の障害されるような病態で共通に認められる。その原因としては脊髄癆が最も古典的なものであるが,ほかにフリードライヒ病Friedreich ataxiaのような脊髄小脳変性症糖尿病ギラン=バレー症候群のような多発性神経炎または多発性根神経炎,ビタミンB12欠乏症にみられる亜急性連合索変性症,脊髄腫瘍などでも,同様の現象がみられる。下肢に失調症のみられることが多く,起立や歩行時の平衡障害が著しい。…

【血糖】より

… 100gのグルコースを正常人が早朝空腹時に経口摂取すると(ブドウ糖経口負荷試験),食後3時間までに,前述の脳,赤血球等の取り分25gのほかに,60gが肝臓に取り込まれ,残り15gが筋肉や脂肪組織に受け取られる。この際の血糖値の経時的変化を示す曲線を糖忍容力曲線と呼ぶが,糖尿病では正常人よりインシュリン分泌が低下するので,低下するにつれて曲線がより高位を占める傾向を示し,糖尿病,肥満,肝臓障害等で標的細胞でのインシュリンの作用が現れにくくなると(インシュリン抵抗性),組織内に取り込まれずに血中に残存するグルコースが蓄積して,いつまでも高値をとるようになる。
[血糖の再吸収と血糖濃度の異常]
 グルコースは正常では尿中にはほとんど排出されない。…

【ケトージス】より

…ふつうケトン体は肝臓以外の組織に運ばれてエネルギー源として利用されるが,酸性であるため大量に存在するとアシドーシスを生じ,尿中へも排出される(ケトン尿症)。ケトージスは糖尿病,飢餓(嘔吐,食欲不振),糖原病(ギールケ病)などで招来されるが,とくにインシュリン欠乏を伴う糖尿病では典型的に糖質,脂肪,タンパク質の利用低下があり,浸透圧利尿による脱水,ケトン体による陽イオン排出のための血清電解質異常(ナトリウム低下やCO2の減少など)を生じる。このような状態ではコルチゾールやグルカゴンも増加してケトージスを促進し,血液pHの低下も著明となれば昏睡となる。…

【再吸収】より

…しかし,これらの物質も,血中濃度がある濃度をこえて高くなると尿中に排出されるようになる。たとえば糖尿病の場合には,糖尿として排出される。これは,ろ過によって尿細管管腔内に流入してくる糖の量が,尿細管上皮細胞の輸送系の再吸収能力の限界をこえ,再吸収しきれなくなって起こる現象で,オーバーフロー性糖尿という。…

【食品】より

…特殊栄養食品は,強化食品ならびに特別用途食品に大別される。強化食品には米,押麦,小麦粉,食パン,ゆでめん,乾めん,即席めん,みそ,マーガリン,魚肉ハム,魚肉ソーセージなどがあり,特別用途食品には,低ナトリウム食品,低カロリー食品,低タンパク食品,無乳糖食品,アレルギー疾患用食品,糖尿病食調整用組合せ食品,肝臓病食調整用組合せ食品などがある。
[その他の分類による食品群]
 食品は加工の有無によって,生鮮食品,貯蔵食品,加工食品に分けられる。…

【動脈硬化】より

…久山町の調査での剖検例について,血圧と脳動脈硬化との関係をみると,高血圧群では正常血圧群より15~20歳早期から動脈硬化は高度となり,50歳以降正常血圧群との間には有意の差がみられた。高血圧(3)糖尿病 糖尿病患者の死因として,心血管系合併症が高率でみられる。欧米および日本の最近の死因統計にみられるように,糖尿病患者の死因の40~50%以上が心臓,脳,腎臓など血管系障害によって占められている。…

※「糖尿病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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