内科学 第10版 の解説
血漿蛋白異常をきたす疾患(白血球系疾患)
Ig異常は3つの主要な病態,すなわち①低ガンマグロブリン血症,②多クローン性高ガンマグロブリン血症,③単クローン性高ガンマグロブリン血症,に分類される(表14-10-22).低ガンマグロブリン血症を認めた場合は,まず先天性か後天性かを区別する.多クローン性高ガンマグロブリン血症を認めた場合は,まず炎症,慢性感染症,悪性腫瘍あるいは肝疾患の存在を考慮する.単クローン性高ガンマグロブリン血症を認めた場合は,まずIgMかあるいはその他のタイプのIgかを区別する.もしIgMである場合は,MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance),原発性マクログロブリン血症あるいはその他(リンパ増殖性疾患あるいはIgM型骨髄腫)を考慮する.もしIgMでない場合は,非IgM型MGUS,多発性骨髄腫あるいは形質細胞腫を考慮する.アミロイドーシスの存在も考慮する.
単クローン性ガンマグロブリン血症(M蛋白血症)は,単クローン性に形質細胞あるいはBリンパ球が増加することで,血清中にこれらの細胞が産生した単クローン性のIgが増加するものである.M蛋白血症の診断,すなわち,M蛋白を同定する方法で最良のものは,セルロースアセテート法による血清蛋白電気泳動法であり,血清および尿をサンプルとして用いることができる.デシトメトリーによる血清蛋白分画解析でγ位からβ位にモノクローナルスパイクあるいはMスパイクとよばれる鋭いピークを形成する(図14-10-22).Mスパイクを認めた場合は,免疫固定法(図14-10-23)あるいは免疫電気泳動法を用いてM蛋白のタイプ(Igのタイプ)を決定する.M蛋白が少量の場合,たとえばIgの血中濃度が正常範囲内の場合でも,免疫電気泳動法でM蛋白のタイプを判定することが可能なことが多いが,免疫固定法の方がより少量のM蛋白を鋭敏に同定できる.免疫固定法は,M蛋白が同定されなくても,リンパ増殖性疾患あるいは形質細胞腫瘍が疑われる場合,すなわちアミロイドーシスや非分泌型骨髄腫の診断,あるいは治療で完全奏効を得た症例の再発のモニターに有効である.
血清フリーL鎖は骨髄腫などの形質細胞腫あるいはアミロイドーシスを疑う症例の診断に有効である.フリーκ鎖とフリーλ鎖の両者を測定して,これらの比(κ/λフリーL鎖比)を求める検査であるが,大きな偏りがある場合には,M蛋白の存在を示唆する.
M蛋白血症の代表的疾患として骨髄腫があるが,その診断基準と病型分類は,International Myeloma Working Groupの国際診断基準(IMWG診断基準)(表14-10-23)が用いられることが多い.[松永卓也]
■文献
Hanamura I, et al: Frequent gain of chromosome band 1q21 in plasma-cell dyscrasias detected by fluorescence in situ hybridization: incidence increases from MGUS to relapsed myeloma and is related to prognosis and disease progression following tandem stem-cell transplantation. Blood, 108: 1724-1732, 2006.
Harada H, et al: Phenotypic difference of normal plasma cells from mature myeloma cells. Blood, 81: 2658-2663, 1993.
Malpas JS, Bergsagel DE, et al: Myeloma, pp1-581, Oxford University Press, Oxford, 1995.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報