アミロイドーシス(読み)あみろいどーしす(英語表記)amyloidosis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アミロイドーシス」の意味・わかりやすい解説

アミロイドーシス
あみろいどーしす
amyloidosis

アミロイド症のことで、類デンプン症などともよばれる。アミロイドは線維状を呈する複合タンパク質で、このアミロイドが全身または局所に沈着してくる疾患をいう。遺伝性家族性に現れてくる原発性アミロイド症と、慢性感染症や骨髄腫(しゅ)に伴って現れる続発性アミロイド症に分けられる。原発性アミロイド症は比較的まれな疾患であるが、特定疾患(難病)の一つとして国(厚生労働省)から指定されている。

 アミロイドーシスは、アミロイドが沈着してくる臓器がとくに心臓腎臓(じんぞう)、神経などに偏っているため、それぞれ心障害型アミロイドーシス(心アミロイドーシス)、腎障害型アミロイドーシス(アミロイド腎症)、アミロイド神経炎などとよばれる。男女ともに、発病は20~40歳代に多く、慢性進行性に経過する。家族性遺伝性に現れるが、なかでもアミロイド神経炎は数代にわたって発生する大家系が熊本県や長野県などでみいだされた。しかし、孤発例もみられる。

 アミロイド神経炎は、アミロイドが末梢神経と自律神経に著明に沈着し、特有な症状を示す。主症状は全身の感覚および運動障害と自律神経の障害で、上肢または下肢末端から始まる温度覚や痛覚の鈍麻、ついで振動覚や位置覚も冒されるが、温度覚や痛覚の消失が高度で、分離性の知覚障害がみられる。すなわち、すべての感覚が障害されず、そのうちの一部が冒され、ほかのものは正常に保たれているような知覚障害である。これに続いて、四肢末端から筋力低下や筋萎縮(いしゅく)が始まり、全身に及ぶ。自律神経障害は特有で、陰萎(いんい)、下痢と便秘の交代や腹痛などの胃腸症状、立ち上がると血圧がほとんどゼロになる著明な起立性低血圧、立ちくらみや失神発作、発汗異常や難治性皮膚潰瘍(かいよう)などの皮膚障害、尿失禁などの膀胱(ぼうこう)障害を示してくる。瞳孔(どうこう)の不正形や硝子体の混濁もみられる。

 心障害や腎障害は遅れて出現し、しだいに心不全、尿路感染、尿毒症などを合併して重症となる。心アミロイドーシスはやや高齢に多く、浮腫(むくみ)、息切れ胸痛など心不全がみられ、ジギタリス剤に反応せず、巨大舌などを伴う。アミロイド腎症はネフローゼ症状と発熱や関節痛などを主とするもので、尿毒症に進展する。

 診断は、末梢神経、筋、直腸などの生検によってアミロイドを証明することで決められる。治療は、対症療法が中心となるが、病型によっては肝臓移植や化学療法が行われ、また、新しい薬剤の開発が進んでおり、期待されている。

[里吉営二郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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