血液細胞の一つである形質細胞ががん化して異常に増え、役に立たないタンパク質を大量に作るなどして発症するがんの一種。正常な血液細胞が減少するため、貧血によるだるさや息切れのほか、頭痛や肺炎、骨がもろくなるなどの症状が出る。白血球が減少して免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなったり、血小板が減って、出血の際、血が止まりにくくなったりする。中高年で発症し、男性にやや多い。治療は薬物療法を中心に放射線療法、血液細胞を作り出す造血幹細胞の移植などがある。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
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出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」EBM 正しい治療がわかる本について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
単クローン性免疫グロブリン(M蛋白)をつくる形質細胞が腫瘍性に増え、これに伴い貧血や感染症、腎障害、骨病変などが引き起こされる病気です。この腫瘍細胞は免疫グロブリン(IgG、IgA、IgD、IgE)、またはベンス・ジョーンズ蛋白(
原因はまだ不明で、悪性リンパ腫と同様に高齢者、とくに70歳以上に好発します。年間発症数は人口10万人あたり約2人で、全
発病は、多くの症例ではいつから始まったかはっきりせず、ゆっくりと進行します。何の症状もなく、定期健診を受けたところ血液および尿の蛋白の異常(M蛋白)を指摘され、これがきっかけでこの病気が見つかることもあります。
自覚症状としては胸や背中、腰などの痛み、体重減少などがあります。骨折して受診し、この病気が発見されることもあります。骨はほとんど全身の骨が侵されますが、
血液中の蛋白の数値が高く、分析すると免疫グロブリンといわれる蛋白の一種が異常に高い数値を示すことから診断されます。
病期分類を表16に示します。
多発性骨髄腫の診断確定後、治療が必要な症例かどうかを検討します。無症状の症例(病期Ⅰの大部分)では、治療を行わずに厳重な経過観察だけを行います。
病期ⅡまたはⅢ、明らかな骨病変の存在、M蛋白血症に関連した臓器障害、検査値異常を有する場合、またM蛋白が進行性に増加する場合が治療の対象となります。
●65歳以下の治療対象となる患者さん
入院のうえ、造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)移植を前提とした治療を行います(高度の腎機能障害、心アミロイドーシス合併例は、適応を慎重に決定する)。通常、初回治療としてVAD療法(オンコビン、アドリアシン、デカドロン)を行います。
●66歳以上の患者さん
原則としてMP療法(アルケランおよびプレドニン)を行いますが、一般状態が良好である場合、造血幹細胞移植を前提とした治療を検討することもあります。
移植以外の治療法を選択した場合、プラトーフェイズ(M蛋白値などが安定して増加してこない状態)への到達が、治療の第一目標となります。
●
現在、多発性骨髄腫(とくに65歳以下)の標準的治療法と位置づけられ、生存期間の延長が証明されています。自家造血幹細胞移植には骨髄移植(BMT)と末梢血幹細胞移植(PBSCT)の2つの方法がありますが、PBSCTのほうが感染症や出血などの合併症が少なく、早期に退院が可能であることから一般的になっています。
●サリドマイド
サリドマイドが自家造血幹細胞移植後の再発時に有効であることが知られていますが、日本でも2009年から保険適応となりました。
●ボルテゾミブ
難治性や再発骨髄腫に対しては、プロテアゾーム阻害薬のボルテゾミブが有効と考えられています。なお日本人に投与した場合、重篤な肺障害の報告があるため、初回投与は入院が必要です。その他、末梢神経障害や
多発性骨髄腫は一般に経過が長い病気ですが、骨痛や貧血などで日常生活に支障を来したり、感染症にかかりやすくなったり、時には腎機能が悪くなって
腎障害の進展を予防するため、十分な水分摂取を心がけることも重要ですし、白血球減少がない時期においても感染症にかかりやすいので、うがいの励行がすすめられます。
多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞というリンパ球が腫瘍化した病気で、単に骨髄腫ということもあります。
腫瘍化した形質細胞を骨髄腫細胞と呼びます。形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生する細胞ですが、多発性骨髄腫になると異常な抗体(M蛋白)が産生され、正常な抗体はむしろ低下するために免疫力は低下します。おもに50歳以上の中高齢者に発症する病気です。
多発性骨髄腫の症状は、骨の痛み、病的骨折・圧迫骨折、
骨の痛みと貧血がある時には、多発性骨髄腫の可能性を常に念頭におくことが重要です。背中や腰の痛みを訴えることが多いため、はじめに整形外科を受診することがしばしばですが、診断と治療はおもに血液疾患専門内科医が行います。
多発性骨髄腫が疑われる時には、血液検査(貧血や異常免疫グロブリンの有無、腎機能、カルシウム値など)、尿検査(尿に排出される異常蛋白の有無)、X線検査(骨の異常や骨折の有無)のほかに、骨髄中の骨髄腫細胞の増殖を調べる目的で骨髄
一般に、多発性骨髄腫は緩やかに進行する病気で、進行程度によって病期を3つに分類します。
Ⅰ期は、骨髄腫細胞やM蛋白が認められるものの軽度であり、貧血や骨の病変が認められない場合です。通常、治療は行わず、定期的な血液検査で経過を観察します。
Ⅱ期、Ⅲ期は、M蛋白値が高値で、貧血、骨病変、血中カルシウム高値などが認められる場合です。多発性骨髄腫においては、早期治療開始が必ずしも長期的な予後改善に結びつかないことがわかっており、通常Ⅱ期、Ⅲ期から治療が行われます。
●治療
主な治療法には、化学療法(抗がん薬による治療)と放射線療法があります。
多発性骨髄腫は化学療法(薬物療法)で効果が現れる疾患ですが、残念ながら確実に治癒を期待できる治療法は確立されていません。
放射線療法は、骨髄腫細胞が
高齢者の骨髄腫に対する一般的な化学療法は、メルファランとプレドニゾロンを4日間定期的に投与するMP療法ですが、もう少し強力なVAD療法という治療を行う場合もあります。また、デキサメタゾンというステロイド薬を大量に投与する治療法もあります。
最近は、治療抵抗性の場合に、ボルテゾミブ(ベルケイド)やサリドマイドなどの分子標的薬も使用されるようになりました。また、骨病変の改善にはビスホスフォネートという薬剤が用いられます。
●ケア
症状が安定していれば、日常生活に特別の制約はありません。むしろ、過度の安静は骨病変の進行につながるので、高度の骨病変がないかぎり、適度な運動を取り入れた生活を送ることが必要です。
ただし、打撲・転倒などによる骨折にはくれぐれも注意を払う必要があります。また、中腰の姿勢を伴う作業や急に姿勢を変換することなどは、圧迫骨折や病的骨折の原因となるので極力避けることが望まれます。
多発性骨髄腫では、正常免疫グロブリンの産生低下や化学療法の結果、しばしば免疫不全状態に陥ります。つまり、細菌やウイルスに対する抵抗力が低下するので、発熱、
また、腎障害は予後を左右する危険な合併症です。脱水状態は腎障害を悪化させるので、何らかの理由で水分制限をする必要がある場合以外には、普段から水分を十分に摂取するように心がけることも大切です。
安川 正貴
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
Bリンパ球から分化した形質細胞(大部分は
●おもな症状
骨の痛み(腰や背中)、全身
①血液検査(蛋白分画、Mピーク、免疫電気泳動)
▼
②尿検査(異常蛋白の検出)
▼
③骨X線単純撮影/CT/MR
▼
④骨髄穿刺(病理診断)
血清蛋白分画が指標。病的骨折からの発見も
病的骨折などの症状が出ている場合では、骨の単純X線で「抜き打ち像」と呼ばれる黒く抜けた所見(骨が溶けているため)がみられることがあります。これから骨髄腫が発見されることもあります。
通常、とくに最近では検診での血液検査で発見されることが多く、血清蛋白分画(→参照)でのM蛋白の増加が指標となります。M蛋白は、種類によっては尿中に多量に排泄されるものもあるので、尿検査(→参照)も行われます。さらに、免疫電気泳動をはじめとする検査で、異常免疫グロブリンの検出が行われます。
骨髄に針を刺して、骨髄液(細胞)を採取(骨髄
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…免疫グロブリンを産生・分泌する形質細胞が腫瘍性に増殖する悪性腫瘍。主として骨髄で増殖し,各所の骨が侵されることが多いので,多発性骨髄腫multiple myelomaとも呼ばれ,単クローン性免疫グロブリン(Mタンパク)の出現,骨病変などを特徴とする。腫瘍化した形質細胞(骨髄腫細胞)は骨髄で主として結節状に増殖し,次第に骨皮質を融解・破壊して骨折(病適骨折)を起こす。…
※「多発性骨髄腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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