表面電離法(読み)ヒョウメンデンリホウ

化学辞典 第2版 「表面電離法」の解説

表面電離法
ヒョウメンデンリホウ
surface ionization method

固体試料の同位体比質量分析計により測定する際のイオン化法.高温の金属表面から分子または解離したものが正イオンとして蒸発する現象を利用したもので,熱イオン放射(thermoionic emission)ともいう.仕事関数 φ,絶対温度Tの金属表面からイオン化電圧Iの物質が蒸発する場合,正イオンと中性粒子の比 n/n0 は,

で表される.ここで,rr0 はそれぞれイオンと中性粒子の内部反射係数,gg0 はそれぞれの統計的重量である.金属表面上の試料が薄ければexpの前の項は1として近似できる.仕事関数が十分に高くイオン化電圧が低い物質についてはイオン量は十分に大きく,アルカリ金属をタングステン上につけたものは,ほぼ100% がイオンとして蒸発する.質量分析計でイオン源に使用する形式にはいろいろあるが,広く使用されている三重フィラメント方式を図で示す.相対する2本の試料フィラメントに適当な方法で試料を塗り,中央の電離用フィラメントを高温にする.試料フィラメントは単に試料を蒸発させるだけで,比較的低温で蒸発量を制御し,それと無関係に電離用フィラメントを使用するため,蒸発による同位体分別効果を抑制することができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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