蒸発とは液体または固体の表面だけから気化が行われる現象をいう。気象学や水文学で問題となるのは,水または氷が水蒸気となって空気中に逃げていく現象であり,蒸発量といった場合は水の蒸発量をさす。蒸発量を測定する器械を蒸発計といい,ふつう測候所などでは円筒容器に水を満たしその水位変化により測定する。1日の蒸発量は季節によってもちがうが,真夏の快晴でも数mm程度である。蒸発量を大規模に見ると,低緯度ほど量は大きいが(年間100~150cm),降雨量と蒸発量の差は緯度10°~30°(北緯,南緯とも)の亜熱帯高気圧域の海が最も大きく,年間50cmにも達する。この水分は貿易風にのって低緯度側に運ばれる。それが活発な対流活動で上空に運ばれ,圏界面近くに至る。全地球上の年間総平均の蒸発量はほぼ1000mmであり,降水量も同量のため平衡を保っている。
執筆者:内田 英治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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