日本大百科全書(ニッポニカ) 「袱紗人形」の意味・わかりやすい解説
袱紗人形
ふくさにんぎょう
片手(おもに右手)で人形を遣い、もう一方の手で人形の着物の裾(すそ)をさばいて足の動きを表す様式の、一人一体遣いの指人形。人形の遣い方が茶道の袱紗さばきに似ているところからの名称という。江戸末期ごろの考案と考えられ、明治、大正期に農村娯楽として栄え、群馬、埼玉、千葉に散在した。多くが衰滅し、現存は埼玉県秩父(ちちぶ)郡横瀬(よこぜ)町の横瀬人形(秩父人形とも)と群馬県沼田市沼須(ぬます)町の沼須人形の二つ。音曲は前者が説経節、後者が義太夫(ぎだゆう)節。ともに首(かしら)は8、9センチメートル、人形は50センチメートル程度で、人形の着物の背中から手を差し込み、首を中指と人差し指の間に挟み(ハサミ式)、親指と小指に人形の左右の手をくくりつける。首には、眉(まゆ)、目、口の動くものもある。専用組立て舞台をもち、横瀬は彫り物で飾られた回り舞台で『小栗判官(おぐりはんがん)』『日高川』『葛(くず)ノ葉(は)』など、上演は不定期。沼須は二重舞台で『弁慶上使(べんけいじょうし)』『朝顔日記』など、上演は4月3日(砥石神社春祭)と4月第2日曜(沼田市民会館)。
[西角井正大]