日本大百科全書(ニッポニカ) 「西洋料理通」の意味・わかりやすい解説
西洋料理通
せいようりょうりつう
明治時代の西洋料理書。横浜に居留していたイギリス人が日本の傭人(ようにん)に料理を命ずるときの手控え帳を手に入れ、これを仮名垣魯文(ろぶん)が種本として1872年(明治5)に書いたものである。料理材料は英語、オランダ語と訳語で書き、スープは吸い物、キンコンフルは胡瓜(キュウリ)と訳しているが、ボートル(バターのこと)は訳せないとして原語のままである。容積もコールツとかハインツと種本のままの度量衡を用いている。これはクォートquart(約1.14リットル=イギリス、0.95リットル=アメリカ)、パイントpint(0.57リットル弱=イギリス、0.47リットル強=アメリカ)のことであろう。第1章のスープの作り方から始まって、魚料理、肉料理、野菜料理、菓子の作り方まで8章あり、110項目にわたって料理法が記載されている。
[小柳輝一]