西洋料理(読み)せいようりょうり

精選版 日本国語大辞典 「西洋料理」の意味・読み・例文・類語

せいよう‐りょうり セイヤウレウリ【西洋料理】

〘名〙 西洋風料理。多く肉を主とした料理。洋食
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉初「そろそろ開化し西洋料理(セイヤウレウリ)。その功能深見草

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デジタル大辞泉 「西洋料理」の意味・読み・例文・類語

せいよう‐りょうり〔セイヤウレウリ〕【西洋料理】

西洋風の料理。洋食。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西洋料理」の意味・わかりやすい解説

西洋料理
せいようりょうり

西洋料理はヨーロッパ、アメリカなどの西洋諸国において発達した料理である。料理はその国の風土産物民族性などによって違いがある。西洋料理にみられる共通特色は、鳥獣肉類の広範囲にわたる利用と多量の油脂の使用、ならびに料理の風味を高めるための各種の酒類スパイスなどの使用があげられる。

[小林文子]

日本における西洋料理

日本に初めて西洋料理をもたらしたのは、1543年(天文12)種子島(たねがしま)に漂着したポルトガル人であるといわれている。それから1639年(寛永16)徳川3代将軍家光(いえみつ)が鎖国令を発布するまで、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリスとの間に交流が盛んに行われ、洋風料理も広まっていった。鎖国によって西洋料理も姿を消したが、19世紀の初期に蘭学(らんがく)が盛んになるとともに、オランダ風の料理がつくられていた。1858年(安政5)日米修好通商条約調印によって長崎、横浜、箱館(はこだて)の港が開港されたのを機に、西洋料理は本格的に普及し始めた。横浜は江戸に近いので開港当時もっとも重要視されて、外人用ホテルができ、コックが来日して日本人にもその技術が伝わっていったが、当時の西洋料理は西洋人のために供されることが多かった。日本人相手の洋食としては、1869年(明治2)東京・神田(かんだ)にできた三河屋(みかわや)が元祖とされている。1872年には精養軒が西洋料理店として開業している。そのほかに築地(つきじ)の日新亭、茅場(かやば)町の海陽亭、芝山内(しばさんない)の三縁亭などが西洋料理店として開かれた。1883年鹿鳴館(ろくめいかん)の開館を契機に、西洋料理は急激に発展した。当時の西洋料理の主流は、イギリス料理とフランス料理であった。大正時代になって丸の内の中央亭、芝三田(みた)の東洋軒など著名な店ができて、西洋料理の黄金時代となる。

 一方、当時の一般家庭にはカレーライス、ハヤシライス、トンカツ、コロッケなどの日本化された西洋料理の普及がみられる。第二次世界大戦後は、生活の洋風化とともに食はますます洋風になり、それにつれて調理器具も発達して、多種の西洋料理が一般家庭でもつくられるようになった。日本料理を和食というのに対して、西洋料理を身近によぶ洋食ということばも生まれた。昭和に入ってから現在までの間、日本における西洋料理の進歩発展ぶりは目を見張るものがある。航空網の発達で世界は近くなり、各国の料理をいながらにして楽しむことができるようになった。

 日本で一般に西洋料理という場合には、だいたいフランス料理をさし、とくに正餐(せいさん)には欧米同様にフランス料理をフランス語のメニュー(献立表)で供する。家庭料理には、イギリス料理が相当入っているとみてよい。

[小林文子]

西洋各国料理の特色

(1)アメリカ料理 移民によってもたらされた各国の料理を取り入れ、豊富な農産物と徹底的に合理化された加工法により、大量生産される加工食品を利用する料理が多い。冷凍食品、半調理品、インスタント食品などはアメリカで発達した。

(2)イギリス料理 実質的な家庭料理として知られている。肉料理、とくにローストビーフは有名である。また紅茶を飲むことが盛んで、自家製のケーキ、ビスケット、サンドイッチなどが発達している。

(3)イタリア料理 スパゲッティ、マカロニのような粉料理と、特産品のオリーブ油、トマト、チーズを用いた料理が多い。代表的な料理としては、ひき肉を包んでゆでたラビオーリ、白ソースをかけて焼いたカネローネ、トマトソースをかけて焼いたラザーニャなどがある。香辛料をたっぷり使うことも特色で、地中海を控えた地形から魚貝料理も有名である。

(4)ドイツ料理 合理的な家庭料理を特色としている。とくにジャガイモ料理は有名で、主食としても用いられている。肉類の加工にも特色があって、ソーセージなどとくに美味である。

(5)フランス料理 古代ギリシア、ローマで発達した料理が基になり、ルイ王朝時代に王朝の保護を受けて発達したもので、芸術的で美味な料理である。国土に産する産物と、美味なものを、あくまで追求する熱意をもって、楽しみながら料理を味わうという民族意識が、フランス料理をして世界に冠たるものとなさしめたといえよう。

(6)北欧料理 スウェーデンやノルウェーでは魚貝類が豊富で、とくに薫製品、塩漬けなどの加工技術が発達している。また、スモーガスボードはこれらの国の特色料理とされている。大きな食卓の上に各種料理を美しく並べ、各人が好みのものを欲しいだけ食べることができる。

(7)ロシア料理 前菜はロシアから始められたといわれるほど、前菜の種類が豊富である。ザクースカは有名で、酒とともに楽しむ風習がある。キャビアはカスピ海でとれるチョウザメの卵の塩漬けで、前菜料理の貴重な一品とされている。そのほかスープのボルシチも、その名が広く知られている。

[小林文子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西洋料理」の意味・わかりやすい解説

西洋料理
せいようりょうり

一般に西ヨーロッパおよび北アメリカの料理をさす。西洋料理は肉と油脂を主材料にし,香辛料の使い方に重点をおき,食器は皿を使う。西ヨーロッパ諸国はさらに,その風土,気候,民族,社会事情によって,それぞれの国の特徴ある食料品によって特徴ある料理を生み出している。日本で行われている西洋料理は,欧米各地の料理と必ずしも同一でなく,日本人の好みに合せてつくられたものである。 16~17世紀頃にポルトガル料理を南蛮料理として取入れ,てんぷら水炊などにそれが残されている。江戸時代末期から明治にかけて,文明開化の波に乗って多くの洋食屋が生れた。現在,晩餐会,結婚披露宴の食事では,主としてフランス風の献立,料理が取入れられている。

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世界大百科事典 第2版 「西洋料理」の意味・わかりやすい解説

せいようりょうり【西洋料理】

欧米諸国の料理の総称であるが,日本および近隣の中国,朝鮮などを除く諸外国の料理という意味で,より広義にインド,中近東,東南アジア,その他の料理を含めることもある。どの国の料理も〈焼く〉〈煮る〉〈揚げる〉〈蒸す〉といった調理法の基本に変りはないが,それぞれ異なる気候風土,産物,歴史などの影響を受け,特徴ある料理が発達している。西洋料理に共通する特色としては,獣鳥肉を主材料とすること,油脂類,香辛料を多く使うこと,穀物をおもにパンの形で粉食することなどがあげられる。

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