スープ(読み)すーぷ(英語表記)soup 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ
すーぷ
soup 英語
potage フランス語

西洋料理の食事の初めに勧められる汁物を総称してスープという。スープは微妙な、ふくよかな味を有する流動食で、普通は食事の初めにとる。スープを食べることによって、胃に快い刺激を与え胃液の分泌を盛んにし、食欲をおこす。スープのできばえは調理する人の心を伝え、その食事全体をも支配するといってよい。

[小林文子]

歴史

ローマ時代から8~9世紀ごろまでは、鍋(なべ)に材料と水を入れて煮込み、材料が柔らかくなり、おいしい汁になったころ、いっしょに食べたものであった。18世紀になって、肉、野菜と汁を別々に食べるようになった。そして、煮汁のほうがポタージュとなった。フランスではスープ類の総称をポタージュという。

[小林文子]

スープの材料

ジャガイモニンジンタマネギアスパラガスホウレンソウトウモロコシカブ、その他の野菜類、米などを単独に、または組み合わせて、限りなくさまざまなスープができる。だし汁は、肉、魚の骨、あらなどに、タマネギ、ニンジン、セロリパセリなどの芳香野菜、タイム、セージローレルなどの香草を加えてつくったストックを土台として、主として牛乳とあわせてつくることが多い。

[小林文子]

スープの種類

〔1〕澄んだスープclear soup(英語) potages clairs(フランス語) ブイヨンおよびコンソメがある。ブイヨンは、野菜、肉、骨、魚貝類の魚だし汁を漉(こ)したもので、調味してスープとして用いる。コンソメはブイヨンを土台としてつくったさらに澄明なスープである。

〔2〕濃度のあるスープcream soup(英語) potages liés(フランス語)
 トウモロコシのスープ、ビスキュウスープがある。(1)トウモロコシのスープ 缶詰のトウモロコシを裏漉しにかける。鍋にバターを溶かし、小麦粉を加えて軽く炒(いた)め、トウモロコシを入れて混ぜ合わせる。別に温めておいた牛乳を加え、混ぜながら煮立てる。一度沸騰したら火を止めて仕上げにバターを入れる。なお、スープをつくるときは厚手の手付き鍋に、木杓子(しゃくし)を使うとおいしくできる。浮き実としては、食パンを揚げたクルトンがよく使用される。(2)ビスキュウスープbiscue soup(英語) potages bisques(フランス語) このスープは野菜類、鳥獣肉類を裏漉ししてつくり、濃度を白米でつける。ジャガイモ、インゲンマメなどは、それ自身デンプン質があるので、つなぎを必要としない。野鳥類には、豆類をつなぎとして使用する。シバエビのビスキュウスープのつくり方は、まずシバエビを洗う。タマネギ、ニンジンの薄切り、別にローレル、ニンニク、パセリなどをセロリの茎で包み、紐(ひも)で固く縛って香草の束(ブーケガルニー)を用意する。野菜と白米をバターで軽く炒め、塩、こしょうをしてだし汁を注ぎ、香草の束を入れ、白米を入れて煮る。シバエビはバターで軽く炒めて、ブランデーを注ぎ、だし汁を加えて煮てからすりつぶす。この中に野菜と米の煮たものを加えて、よくすりつぶし、裏漉しにかける。二度漉しすると口当りのよいスープとなる。盛り付けるときに卵黄を牛乳で延ばして混ぜ、さらに生クリーム、バターなどを加えると、こくのあるスープをつくることができる。

〔3〕特殊なスープspecial soup(英語) potage spécial(フランス語) 中身の入っているもので、オニオングラタンスープ、クラムチャウダー(アメリカ)、ボルシチ(ロシア)、ミネストローネ(イタリア)などが代表的である。牛肉と野菜のボルシチは牛肉(イチボ肉)にキャベツ、ネギ、セロリ、ニンジン、赤カブを水とともに長く煮込む。煮汁を漉して、野菜類は適宜の大きさに切って入れる。赤カブは汁にしてスープに少々加え、さらに食べるときスープに加える。これは特殊な珍しいスープである。

 なおスープを盛り付ける器としては、2種類のスープ皿がある。どのスープにも共通に用いる深めの皿と、両側に持ち手のついたブイヨンカップである。主としてブイヨンカップはコンソメに用いられる。

[小林文子]

スープストックの作り方

材料は牛すね肉、ランプ肉、イチボ肉などと、牛骨、ニンジン、セロリ、タマネギ、ローレル、タイム、セージ、クローブ、粒こしょう、塩、水など。スープ鍋に3センチメートルくらいの角切り肉、牛骨、水を入れて火にかけ、ゆっくりと沸騰させる。火を弱め、表面がことこととさざ波のたつ程度で煮る。表面に浮くあくは絶えず取り去る。沸騰後1時間半くらい煮て、野菜類を加える。香料を加えて、さらに30分煮るので、全部で3時間くらい煮ることになる。火を止め静かに漉して、冷やす。冷えると、脂肪が上部に浮かぶので、ていねいにすくい取り除く。これが基本的なスープストックsoup stockの作り方である。

[小林文子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スープ」の意味・わかりやすい解説

スープ
soup

西洋料理の汁物の総称。食欲増進の目的で食事の初めに (前菜のある場合は,前菜の次に) 供される。基本的に昼食には出さず夕食や夜食に供される。スープの起源は,肉や野菜を,硬くなったパンなどと一緒に煮て食べたことにある。各国の伝統的スープは,フランスのプティ・マルミット,イタリアのミネストローネ,ロシアのボルシチなど,実を主とし,汁は従。現在のようなスープになったのは 18世紀なかば頃である。種類を大別すると,澄んだスープ (ポタージュ・クリエールまたはコンソメ) と鶏や魚介類,野菜類の裏ごしや,小麦粉,米などの入った濃厚スープ (ポタージュ・クリーム,ポタージュ・リエ) がある。

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