日本大百科全書(ニッポニカ) 「覚書(日本史)」の意味・わかりやすい解説
覚書(日本史)
おぼえがき
自身の備忘を目的として作成された文書、または記録。前者は一つ書(がき)の形式で記される古文書の一様式をいう。後者は備忘とともに特定の目的をもって記述された記録をいい、とくに近世初期に多く成立し、書上(かきあげ)、聞書(ききがき)、留書(とめがき)などの形式で、自・主家および自身の功労、体験などが記述されており、子孫にその栄誉を認識させるとともに発展を期待するものであったということができる。そのため個々の内容が誇張される場合もあるが、戦国時代から近世初期の社会の変革を示す貴重な歴史的史料となるものも少なくない。現存するおもな覚書には『石川正西聞見集(いしかわしょうさいぶんけんしゅう)』『可児才蔵誓文日記(かにさいぞうせいもんにっき)』『九鬼四郎兵衛働之覚(くきしろびょうえはたらきのおぼえ)』『信長公記(しんちょうこうき)』『三河(みかわ)物語』など多数がある。
[久保田昌希]