日本大百科全書(ニッポニカ) 「覚醒剤中毒」の意味・わかりやすい解説
覚醒剤中毒
かくせいざいちゅうどく
覚醒剤の依存の状態をいう。覚醒剤乱用は第二次世界大戦後の「ヒロポン」によるピークと、1970年ころのピークがあって、いずれも社会問題になった。初めて覚醒剤を使うと、爽快(そうかい)、増動、疲労感軽減、不眠、食欲不振などの中枢刺激作用が現れるが、中断すると、焦燥にかられたり、怒りやすい状態になり、その苦痛から逃れるために連用し、依存に陥るといわれている。中毒状態になると、集中困難をはじめ、増動、幻覚、妄想、猜疑(さいぎ)、不安、抑うつ、情緒不安定、抑制欠除、攻撃、常同症などの統合失調症(精神分裂病)とよく似た症状が現れる。覚醒剤を中止すると、短期間で症状が消える。しかし、あとに感情鈍麻、自我障害などの症状が残ることもある。正常な状態に戻っても、ふたたび覚醒剤を使ったり、飲酒や心理的ストレスを受けると症状が再現したり、別に、自然再燃する例も認められる。とくに統合失調症の経過と比較し、これは病因的な関連から注目されている。
[船渡川誠一郎]