日本大百科全書(ニッポニカ) 「親不知・子不知」の意味・わかりやすい解説
親不知・子不知
おやしらずこしらず
新潟県の最西端、富山県境の糸魚川市(いといがわし)市振(いちぶり)から青海(おうみ)駅まで約15キロメートルの海岸景勝地。北アルプスの北端が300~400メートルの断崖(だんがい)をなして日本海に突入する北陸道の最大難所である。旧街道はこの断崖絶壁の波打ち際の、狭い砂浜を波間をみて走り抜けたので、親は子を、子は親を顧みるゆとりがなかったという。1185年(文治1)大納言(だいなごん)平頼盛(よりもり)の妻が、この海岸で子供を激浪にさらわれ、「親知らず 子はこの浦の波まくら 越路(こしじ)の磯(いそ)のあわと消えゆく」と詠んだのがその起源といわれている。えちごトキめき鉄道(旧、JR北陸本線)の親不知駅を挟んで西側の市振側が親不知、東側が子不知の険で、親不知海岸には浄土崖(じょうどくずれ)、大穴など隠れ穴洞窟(どうくつ)遺跡も残る。1883年(明治16)に開通した国道8号は断崖の中腹を切り開いてつくられ、いまはスノーセットなどで改修されているが、大雨になるとすぐ交通が途絶する。国道筋の風波(かざなみ)に展望台や親不知記念広場があり、県立自然公園に指定されている。糸魚川駅から親不知天険までバス45分。
[山崎久雄]