改訂新版 世界大百科事典 「観象授時」の意味・わかりやすい解説
観象授時 (かんしょうじゅじ)
guān xiàng shòu shí
暦法が未発達の段階において,天文を観察し季節の運行を定める方法をいう。中国の古典《書経》尭典に〈日月星辰を暦象し,敬(つつ)しんで民に時を授く〉とあり,《易経》賁(ひ)の卦(か)に〈天文を観(み)て,以て時の変わるを察す〉とあるように,暦法が完成していない段階では,太陽,月,星の出現の状態などの天文現象を観察し,農耕に必要な四時の変化の規則性を見て,広く人民に時を知らせることが支配層の任務であった。尭典では鳥(υHya),火(σSco),虚(βAgr),昂(ηTau)の4星の南中によって仲春,仲夏,仲秋,仲冬を決定したが,メソポタミアでは太陽が出る前に惑星が見えはじめるヘリアカル・ライジングなどの地平線現象に注目し,エジプトではシリウス星のヘリアカル・ライジングによってナイル川の氾濫を予知した。
執筆者:橋本 敬造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報