改訂新版 世界大百科事典 「請取状」の意味・わかりやすい解説
請取状 (うけとりじょう)
日本の中世以降の古文書。金銭,物品,文書などのさまざまなものを受け取るにあたって,請取人がその受領の証拠として差し出す文書。例えば売却田畠の代価の請取状などが普通の例である。多く短文で,〈所請如件〉〈所請取如件〉などの請取文言を有する。受領の事実とそれにともなって発生した諸義務の順守を確言する意味があり,文書様式上は請文から分化したものといえる。この点で返抄(律令制において官司の発給する行政的領収証を本来の形とした)とは区別される。ただし,返抄が中世的な年貢公事の収納証として,請取状と紛らわしい〈所納如件〉などという文言・形式をとる場合も多く,この区別はあいまいになっていく。また,近世社会では年貢収納証は年貢分納のたびごとに発給される小手形と,それと引替えに渡される村ごとの1年分の年貢皆済目録というシステムに整理され,普通の請取状は請取証文,請取手形といわれることが多く,長文にわたる場合もあるなど,請取状の様相は一変する。
執筆者:保立 道久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報