豊島久真男(読み)とよしまくまお

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「豊島久真男」の意味・わかりやすい解説

豊島久真男
とよしまくまお

[生]1930.10.5. 大阪
腫瘍学・ウイルス学者。 1954年大阪大学医学部卒業,59年同大学院修了。大阪大学教授,東京大学医科学研究所教授,同所長,大阪大学微生物病研究所長,大阪府立成人病センター総長などをつとめる。アメリカ留学中の 69年,ニワトリに癌を起すウイルス,ラウス肉腫ウイルスに細胞を癌化する遺伝子が存在することを,温度によって発癌をコントロールすることで証明,注目された。その後 src (サーク) と名づけられたこの遺伝子は,アメリカのグループによって正常細胞にも存在することが示され,癌遺伝子研究の突破口となった。 83年豊島は山本雅とともに,癌遺伝子 erb (アーブ) Bを発見,それが細胞内で増殖シグナルを受取る蛋白質である可能性を示した。 80年代から 90年代にかけては,日本の癌研究のリーダー役をつとめている。癌遺伝子はもともと細胞の増殖サイクルを司る遺伝子であることが明らかになってきているが,豊島はその先鞭をつけた。 2001年文化勲章受章。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「豊島久真男」の解説

豊島久真男 とよしま-くまお

1930- 昭和後期-平成時代の病理学者
昭和5年10月5日生まれ。阪大教授をへて,昭和54年東大教授となり,62年同大医科学研究所所長。平成2年阪大微生物病研究所所長。6年大阪府立成人病センター総長。サルク-ファミリーがん遺伝子の研究で,昭和62年学士院賞。平成10年文化功労者。13年文化勲章。大阪出身。阪大卒。

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世界大百科事典(旧版)内の豊島久真男の言及

【癌】より


【癌化の機序】
 1970年以降の20年間に,癌細胞は癌遺伝子や癌抑制遺伝子等の遺伝子異常に起因することが明らかになった。初めて癌遺伝子の存在を実証したのは豊島久真男らである。彼らは1969‐71年にラウス肉腫の温度変異株を用いる実験系を通じ,細胞のトランスフォーメーション(培養内癌化)を起こすには,ある一つの遺伝子の産物が存在すれば必要十分であることをつきとめた。…

※「豊島久真男」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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