癌遺伝子(読み)ガンイデンシ

デジタル大辞泉 「癌遺伝子」の意味・読み・例文・類語

がん‐いでんし〔‐ヰデンシ〕【×癌遺伝子】

細胞癌化に関与する遺伝子。正常細胞に存在するが、通常発現が抑えられていると考えられている。また、癌化に作用するウイルスの遺伝子をいう。

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百科事典マイペディア 「癌遺伝子」の意味・わかりやすい解説

癌遺伝子【がんいでんし】

オンコジーンとも。一定の条件のもとで,細胞を癌化させる働きのある遺伝子の総称。最初に腫瘍ウイルスの遺伝子から見出されたが,それと相同の遺伝子が正常細胞中でも多数見つかっている。両者を,v-(ウイルス由来)癌遺伝子,c-(細胞由来)癌遺伝子と呼んで区別することもある。これらが合わせて50種類ほど知られ,関連遺伝子まで含めると100種類以上になる。正常細胞の癌遺伝子は,本来,細胞の増殖分化に必要不可欠な遺伝子で,多くは増殖因子やその受容体を産生したり,シグナル伝達やタンパク質リン酸化,遺伝子の転写調節などに関与しており,その異常化によって細胞が癌化すると考えられている。また,これらの過程で抑制的に働いていて,その欠損により細胞が癌化するもの(癌抑制遺伝子)も見出されている。→
→関連項目癌抑制遺伝子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「癌遺伝子」の意味・わかりやすい解説

癌遺伝子
がんいでんし
oncogene

細胞の癌化に深い関係のある遺伝子。最初,各種の癌ウイルスから発見されたが,その後,ネズミニワトリ,ヒトなどの癌細胞で次々と見出された。その種類は 40種以上 (ヒトの癌から見出されたものは十数種) に達しており,なおふえる趨勢にある。発見された癌の種類などその由来から,ras (ラス) ,myc (ミック) ,src (サーク) ,erb (アーブ) など固有の名称がつけられている。多くの癌遺伝子は正常な細胞にも存在し,通常は細胞の分裂・増殖の制御,分化・発生の調節などに重要な機能を果しているが,それが化学発癌物質,放射線などの作用によって突然変異を起して癌遺伝子として活性化され,通常とは異なる蛋白質を作るようになり,これがきっかけで癌化のステップが進むと考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の癌遺伝子の言及

【癌】より


[染色体の異常]
 癌細胞には,しばしば染色体の欠失,増幅,転座等が生じていることは古くから観察されているが,近年の遺伝子レベルの癌研究は,これらの染色体異常の発癌における意義を明らかにした。染色体欠失部の研究は,多数の癌抑制遺伝子の発見(後述)を,また,増幅や転座の研究は,多数の癌遺伝子や癌関連遺伝子の発見をもたらした。慢性骨髄性白血病細胞の90%以上に見いだされ,1960年代から有名であったフィラデルフィア染色体は,実は第9番と第22番の染色体相互転座t(9:22)(q34:q11)の産物であり,第9染色体の切断点に存在する原癌遺伝子cABLが第22染色体の切断点に存在するBCR遺伝子と融合して作るBCR‐ABLキメラ産物が強いチロシンキナーゼ作用を有し,細胞癌化の原因となっていることが明らかにされている。…

【癌】より


[染色体の異常]
 癌細胞には,しばしば染色体の欠失,増幅,転座等が生じていることは古くから観察されているが,近年の遺伝子レベルの癌研究は,これらの染色体異常の発癌における意義を明らかにした。染色体欠失部の研究は,多数の癌抑制遺伝子の発見(後述)を,また,増幅や転座の研究は,多数の癌遺伝子や癌関連遺伝子の発見をもたらした。慢性骨髄性白血病細胞の90%以上に見いだされ,1960年代から有名であったフィラデルフィア染色体は,実は第9番と第22番の染色体相互転座t(9:22)(q34:q11)の産物であり,第9染色体の切断点に存在する原癌遺伝子cABLが第22染色体の切断点に存在するBCR遺伝子と融合して作るBCR‐ABLキメラ産物が強いチロシンキナーゼ作用を有し,細胞癌化の原因となっていることが明らかにされている。…

※「癌遺伝子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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