財閥転向(読み)ざいばつてんこう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

財閥転向
ざいばつてんこう

財閥が民衆の反財閥的気運をそらし、他面で軍需経済に対応するために行った諸工作。1931年(昭和6)9月のイギリスの金本位制離脱後のドルの思惑買いは、三井銀行をはじめとする財閥への民衆的反感を募らせた。金解禁政策のもたらした恐慌下のこうした社会的風潮は、浜口雄幸(おさち)首相、井上準之助(じゅんのすけ)前蔵相、団琢磨(だんたくま)三井合名理事長らの暗殺となって噴き上げ、右翼テロが財閥支配を動揺させた。団とともに血盟団の暗殺リストに載った池田成彬(せいひん)三井銀行筆頭常務は、団の死後32年三井合名理事、翌年同常務理事となり、財閥危機を乗り切るための改革を断行した。34年4月3000万円を基金として各方面に寄付をする三井報恩会を設立、33~34年にかけての三井一族の引退、33年7~10月の三井持株の公開、36年の三井職制改革など、財閥への反感をそらすとともに、閉鎖的財閥の近代化を推進した。三菱(みつびし)も34年3月に三菱精神綱要を発表し、持株を公開した。こうした転向は、重化学工業、軍需工業における日産、日窒など新興財閥に対する立ち後れを取り返そうとする巨大財閥の対応でもあった。そのことは、「満州国」成立直後の32年4月、三井、三菱が共同して2000万円の対満融資を提供し、それまで消極的であった対満投資政策を転換したことにも現れている。[長 幸男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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