暗殺(読み)アンサツ

デジタル大辞泉 「暗殺」の意味・読み・例文・類語

あん‐さつ【暗殺】

[名](スル)主に政治上の立場や思想の相違などから、ひそかに要人をねらって殺すこと。「大統領暗殺される」
[類語]謀殺密殺必殺

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精選版 日本国語大辞典 「暗殺」の意味・読み・例文・類語

あん‐さつ【暗殺】

  1. 〘 名詞 〙 人を不意に襲って、殺すこと。特に、政治上の主義、立場などの対立が原因の場合が多い。やみうち。〔新令字解(1868)〕
    1. [初出の実例]「動(やや)もすれば暗殺等を企ること多し」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「暗殺」の意味・わかりやすい解説

暗殺
あんさつ

政治的に影響力をもつ人間を、政治的、思想的立場の相違に基づく動機によって、非合法的かつ秘密裏に殺害すること。より広義には、暴力団同士の対立に由来する場合のように、非合法的殺害一般にも用いられる。暗殺を意味する英語assassinationおよびフランス語assassinatは、アラビア語のhashshāshǐn(麻薬の一種のハッシシhashishを飲んだ人、を意味する)に由来している。11世紀末にハッサン・サバーハHassan-ben-Sabbahという人物がペルシアにおいて少数精鋭秘密結社をつくり、結社員にハッシシを与えては政府要人を暗殺させたが、この暗殺団のことが十字軍によりヨーロッパに伝えられ、語源となった。暗殺の歴史自体はより古く、紀元前336年の古代マケドニア王フィリッポス2世や前44年のカエサル(ブルートゥスらによる)の例が知られている。近代以降では、フランス革命期のマラー、アメリカ大統領リンカーン、20世紀にもロシアの革命家トロツキー、アメリカ大統領ケネディ、エジプト大統領サダトらの例があり、わが国でも、時の権力者伊藤博文(ひろぶみ)、原敬(たかし)や、反権力側の山本宣治浅沼稲次郎などの例がある。

 暗殺には、権力者によるものと権力者に対するもの、白色テロ赤色テロ、政治的計画性の強いものと個人的動機の強いものなどの区別があるが、いずれも政治的緊張の高まりのもとで政治不安、政治危機を促進し、ときには戦争の引き金となる(例、第一次世界大戦)。また宮廷革命クーデターと密接に関係する(例、二・二六事件)。

[加藤哲郎]

『ムハンマド・ハサナイン・ヘイカル著、佐藤紀久夫訳『サダト暗殺――孤独な「ファラオ」の悲劇』(1983・時事通信社)』『カール・シファキス、関口篤訳『暗殺の事典』(1993・青土社)』『大沢正道著『大物は殺される――歴史を変えた「暗殺」の世界史』(1994・日本文芸社)』『ジョージ・フェザリング著、沢田博訳『世界暗殺者事典』(2003・原書房)』『大野芳著『伊藤博文暗殺事件――闇に葬られた真犯人』(2003・新潮社)』『ウィリアム・レモン、ビリー・ソル・エステス著、広田明子訳『JFK暗殺――40年目の衝撃の証言』(2004・原書房)』『柘植久慶著『歴史を変えた「暗殺」の真相――時代を動かした衝撃の事件史』(PHP文庫)』

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百科事典マイペディア 「暗殺」の意味・わかりやすい解説

暗殺【あんさつ】

政治的目的のために,政治的要人を非合法的手段で殺すこと。〈王殺しregicide〉が古くから多くの文化圏にみられるように,政治権力の出現とともに暗殺の事例も現れたといえる。暴君は放伐すべしとする〈モナルコマキmonarchomachi〉の可否はヨーロッパでは近代まで論議された。ヨーロッパで暗殺assassinationの語源となった〈アサッシン〉は,イスラム教イスマーイール派の〈あらゆる敵を暗殺する〉という方針から来ている。暗殺は,政治権力の保持者が直接・間接に行う場合と,権力を保持しない者が行う場合に大別される。前者はさらに,(1)権力者間の暗闘による場合(カエサルの暗殺など)と,(2)権力者が刺客を用い反対派リーダーを葬る場合(トロツキーの暗殺など)に分けられる。後者は,(3)権力に対する大衆の反感を背景に時の権力者を倒す場合(帝政ロシアアレクサンドル2世暗殺など)と,(4)権力による暗黙の支持をあてにして政府反対派リーダーを倒す場合(山本宣治の暗殺など)に区分できる。このうち(2)と(4)は識別しがたいこともあるが,一般に右翼による左翼の暗殺という類型が多い。これに対して(3)は左翼による右翼の暗殺が普通である。政治闘争ルールの確立している民主制においては暗殺は正当化されないが,合法的反対の自由がないところでは暗殺を根絶することはできない。→テロリズム

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改訂新版 世界大百科事典 「暗殺」の意味・わかりやすい解説

暗殺 (あんさつ)
assassination

広義には非合法の殺害一般をさすが,狭義には政治的な理由から行われる殺人を意味する。このような事例が古く政治権力の出現にまでさかのぼりうることは王殺害regicideが古今東西をとわず各文化圏に存在することからもわかる。古代ローマのカエサル暗殺のように独裁者・暴君を政治的・宗教的理由から殺害することの可否は,暴君放伐論(モナルコマキ)として,ヨーロッパ政治思想のひとつの論点でもあった。また宗教と政治が未分化な社会では宗教的理由から暗殺が行われたが,特に有名なのは,イスラム教イスマーイール派のアサッシンAssassinにより行われた暗殺でありヨーロッパで暗殺assassinationの語源となったほどである。一般に政治的反対派や反体制運動の存在を認めない抑圧的体制のもとで,暗殺は,反対派が権力者を取り除き,あるいは逆に権力者が反対派を根絶する目的をもって行われる。しかし,個人,集団や階級間の合法的な政治闘争のルールが確立している民主政のもとでは暗殺はいかなる意味でも正当化されないが,右翼や狂信的な過激派の戦術,あるいは政治的リーダーとの非合理な意思疎通を求める手段のひとつとして実行されることがある。暗殺は多く政治家個人を対象としており,体制変革を目的とするものではないから,集団的暴力行使の形態であるテロリズムとは区別されるが,個々の場合にその区分は流動的である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「暗殺」の意味・わかりやすい解説

暗殺
あんさつ
assassination

国や世界,もしくは特定の地域の社会の流れを,行為者側の望む方向に変える目的で,その社会に政治的な影響力をもつ人物を殺害すること。テロリズム行為の一形態である。国家元首もしくは政府首班を対象とする場合が多く,アメリカ合衆国におけるリンカーン大統領(1865)やケネディ大統領(1963)の暗殺,日本では五・一五事件での犬養毅(1932)首相の暗殺などが典型的である。ただし政敵を倒すという意味で,1882年の自由党党首,板垣退助暗殺未遂事件など対立する政党の党首や 1932年の血盟団事件の団琢磨暗殺など財界の指導者などを標的にする場合もある。

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デジタル大辞泉プラス 「暗殺」の解説

暗殺

1964年公開の日本映画。監督:篠田正浩、原作:司馬遼太郎、脚色:山田信夫、音楽:武満徹。出演:丹波哲郎、岩下志麻、木村功、小沢栄太郎、岡田英次、穂積隆信、早川保ほか。幕末の剣士・清河八郎の半生を描く。第19回毎日映画コンクール音楽賞受賞。

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