日本大百科全書(ニッポニカ) 「資産管理信託銀行」の意味・わかりやすい解説
資産管理信託銀行
しさんかんりしんたくぎんこう
custodian
企業や年金基金などの機関投資家から株式や債券などの有価証券を預かり、売買・決済などの管理を代行する金融機関。資産管理をカストディーCustodyとよび、資産管理信託銀行はカストディアンCustodianといわれる。外国証券投資や海外投資家の国内証券投資を対象とすることから、グローバル・カストディアンGlobal Custodianとよばれることもある。業務は有価証券の預かり保管、配当・売買・決済などの運用や運用結果の報告のほか、議決権の行使、会計や税務などの事務を請け負う。このため年金資産の運用状況を集約・分析し、委託元の年金基金に報告する業務も手がける。資産管理には巨大なコンピュータシステムが必要で、資産管理信託銀行は装置産業の性格をもち、定期的にシステム投資がかさむ特徴がある。
1970年代のアメリカで、機関投資家の高利運用需要の増大や企業年金基金の対外証券投資解禁などを背景に生まれた。アメリカでは、ステート・ストリート銀行やバンク・オブ・ニューヨーク・メロンといった預かり資産残高4000兆円規模の巨大資産管理信託銀行が誕生している。日本では政府の規制緩和を受け、2001年(平成13)に都市銀行、信託銀行、生命保険会社などが共同出資で資産管理サービス信託銀行(みずほフィナンシャル系)、日本トラスティ・サービス信託銀行(三井住友トラスト系)、日本マスタートラスト信託銀行(三菱UFJフィナンシャル系)の3行を設立。2020年(令和2)に、資産管理サービス信託銀行と日本トラスティ・サービス信託銀行およびJTCホールディングスが統合して日本カストディ銀行となり、2行体制となった。預かり資産残高は、日本カストディ銀行が約741兆円、日本マスタートラスト信託銀行が約451兆円(2021年3月期)。
[矢野 武 2022年1月21日]