日本大百科全書(ニッポニカ) 「軛の下で」の意味・わかりやすい解説
軛の下で
くびきのしたで
Под Игото/Pod Igoto
ブルガリアの作家イワン・バーゾフの長編小説。オスマン・トルコの軛の下であえぐ民衆、トルコにへつらって同族を売る上流階級、民族運動に挺身(ていしん)する青年たちの愛と苦悩などを織り交ぜながら、革命前夜のブルガリア人の屈辱的生活と、惨敗に帰した1876年の四月蜂起(ほうき)のありさまを史実にのっとって描いたもので、作者の父も進歩的富裕商人として登場させている。反露派政権から逃れてオデッサ(現、オデーサ)に亡命中書き始め、帰国後1894年に発表して好評を得、1910年には自ら戯曲化した。素朴な構成ではあるが、ブルガリア文学を世界的水準にまで高めた作品として現在でも高く評価され、各国語に翻訳もされている。
[真木三三子]