日本大百科全書(ニッポニカ) 「逃亡犯罪人引渡法」の意味・わかりやすい解説
逃亡犯罪人引渡法
とうぼうはんざいにんひきわたしほう
逃亡犯罪人を外国に引き渡す場合の原則と手続を定めた国内法。外国で犯罪を犯し、わが国に逃亡してきた場合、当該国がこの犯人に対し刑罰権を行使するためには、この犯人の身柄を確保しなければならないが、この国が日本国内で公権力を行使することは、わが国の主権侵害になり許されない。そこで逃亡犯罪人の引渡しに関する条約を前提として、条約締結国からわが国に対し犯人引渡しの請求があった場合、原則として、わが国は所定の手続によりこの犯人を当該国に引き渡さなければならない。ただし例外として、国際法上認められた政治犯人不引渡しの原則(同法2条1号・2号)、自国民不引渡しの原則(同条9号)のほか、この外国または日本の刑法からみてそれほど重大な犯罪でない場合(同条3号・4号)や、日本でこの犯人がすでに処罰されたり、わが国の法令によれば処罰することができないと判断される場合など、特別の理由があれば、逃亡犯罪人を引き渡す必要はない。
[名和鐵郎]