遼三彩(読み)りょうさんさい(英語表記)Liáo sān cǎi

改訂新版 世界大百科事典 「遼三彩」の意味・わかりやすい解説

遼三彩 (りょうさんさい)
Liáo sān cǎi

中国の東北部に建国した契丹族の遼で焼造された三彩陶器。遊牧民族である契丹族は,むろん製陶業はもたなかったが,国家意識に目覚めて916年に建国すると中国文化の摂取につとめ,文化向上につとめ華北陶工を領内に拉致して窯をきずかせた。遼寧省赤峰市に近い乾瓦(かんが)窯はその代表的な窯であり,ここで遼三彩は焼造された。その創始は遼後期の1060年代からであるが,単色の緑釉陶と褐釉陶はすでに10世紀に焼造していると思われる。その伝統のうえに遼三彩はつくられたといえるが,実際には北宋三彩手本となったのであろう。赤土に白化粧して,透明釉・褐釉・緑釉がほどこされた遼三彩は独特のひなびた鮮やかな釉色にくっきりと焼きあがり,魅力が深い。鶏冠壺,長頸瓶,水注,盤,碗,暖盤など,器種もゆたかであるが,実用というよりはおもに有力者の墓葬に副葬された明器(めいき)であったと推測される。遼における三彩づくりは1060年代から1100年前後に沸騰するように量産され,金によって1125年に滅ぼされるとまったく絶えてしまったと思われる。
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