(読み)エイ(その他表記)Yǐng

デジタル大辞泉 「郢」の意味・読み・例文・類語

えい【郢】

中国春秋時代の国の都。現在の湖北省江陵北部にあったと伝えられるが、楚はどこへ遷都してもそこを郢とよんだともいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「郢」の意味・わかりやすい解説

郢 (えい)
Yǐng

中国,春秋戦国時代の楚の都。文王(在位,前689-前677)が現在の湖北江陵県の北にはじめて郢の都をおいたといわれる。春秋の末に呉の侵入に備えて鄀(じやく)(湖北省宜城県北東)に遷都した一時期を除き戦国までつづく。しかし戦国も末になると秦に攻められて前278年には陳(河南省淮陽県)に,前253年には鉅陽(きよよう)(安徽省阜陽県北西),前241年には寿春(安徽省寿県)に都を移したが,前223年ついに秦に滅ぼされた。鄀も寿春も郢とよばれており,楚はどこでも都を郢とよんだようである。郢爰(えいえん)は戦国時代の楚の金貨として知られている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「郢」の意味・わかりやすい解説


えい
Ying

中国,春秋時代の都。現在のフーペイ (湖北) 省チヤンリン (江陵) 県の北部にあたり,紀南城と呼ばれる遺址がその名残りをとどめている。楚の都はのちえんに移ったが,この地もえん郢と呼ばれた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【雲夢】より

…現在では,雲夢とは長江(揚子江)中流域,今の湖北省中央部に形成されていた湖沼を中心に,周囲の山野をも含む広範囲を呼んだものと考えられている。その中央にあった湖沼は,この地点で長江に流入する漢水や沮水(しよすい)などの支流の流量を,自然に調整するために形成されていた遊水池の一つで,今の江陵県(楚呉の都,郢(えい)のあったところ)の東,漢水と長江の中間を広く占めていたもので,その範囲は降水量や氷河の伸長などによって一定してはいなかった。また一部は漢水の北にまで及んでいたが,春秋時代には大部分が陸化し開拓されていた。…

【江陵】より

…武漢の西およそ200kmの長江(揚子江)の北岸にあり,北は河南,陝西へ,西は四川に通ずる交通の要地を占める。春秋時代,楚の文王が定めた国都の郢(えい)はその北郊にあり,春秋戦国を通して臨淄(りんし),邯鄲,大梁や咸陽などと並ぶ大都市として繁栄を誇った。秦・漢には江陵県がおかれて南郡の治所となり,唐・宋は江陵府,明・清は荆州府であった。…

※「郢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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