湖北(読み)コホク

デジタル大辞泉 「湖北」の意味・読み・例文・類語

こほく【湖北】

中国中部の省。省都は武漢洞庭どうていの北方、揚子江漢水の流域にある。春秋戦国時代の地。米・綿花・鉄の大産地。フーペイ

こ‐ほく【湖北】

湖の北。日本では多く、琵琶湖の北の地をさす。

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精選版 日本国語大辞典 「湖北」の意味・読み・例文・類語

こ‐ほく【湖北】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 湖の北。多く、中国では、洞庭湖の北、日本では、琵琶湖の北の地をさす。〔日葡辞書(1603‐04)〕〔方干‐湖北有茅斎湖西有松島軽棹往返頗諧素心詩〕
  2. [ 2 ] 中国の省の一つ。洞庭湖の北に位置し、南部を揚子江が、北部を漢水が貫流する。省都武漢。米、綿花、茶などを産出する穀倉地帯で、大冶の鉄鉱石や石炭など鉱物資源も多く、また全国の水陸空交通の中心に位置して、華中工業区を形成する。沙市、宜昌、襄樊などの都市がある。北岸の地域。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「湖北」の意味・わかりやすい解説

湖北(省)
こほく / フーペイ

中国、華中(かちゅう/ホワチョン)地区北部の省。長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))中流部にあり、洞庭湖(どうていこ/トンティンフー)以北ということで湖北とよばれる。また東部は古くは鄂州(がくしゅう/オーチョウ)に属していたため、鄂を略称とする。面積18万5900平方キロメートル、人口5935万9897(2000)。12地区級市、1自治州、24県級市、39県、2自治県と神農架(しんのうか/シェンノンチヤ)林区からなる。漢民族のほか、トウチャ族、ホイ族、満洲族、ミャオ族、モンゴル族などが居住する。省都は武漢(ぶかん/ウーハン)市。春秋戦国時代は楚(そ)国の地で、国都も江陵(こうりょう/チヤンリン)付近にあった。秦(しん)は南郡を置き、漢代は荊州(けいしゅう)に属した。唐代は江南西道、淮南(わいなん)道、山南東道および黔中(けんちゅう)道に分属し、宋(そう)代にも荊湖(けいこ)北路、京西南路、淮南西路、夔州(きしゅう)路に分かれていたが、元代は湖広(ここう)行中書省、明(みん)代は湖広布政使司に属し、清(しん)代以後湖北省が置かれた。

 西部には巴山(はざん)、巫山(ふざん)、武当山などからなる鄂西(がくせい)山地が横たわり、北部には大洪(だいこう)、桐柏(とうはく/トンパイ)、大別(だいべつ/ターピエ)などの山脈が走り、南東に幕阜(ばくふ/ムーフー)山脈が江西(こうせい/チヤンシー)省との省境をなす。これらの山に囲まれて、中部に長江と漢水(かんすいハンショイ)の沖積作用によって形成された江漢(こうかん)平原がある。もとは平原中央には雲夢沢(うんぼうたく)とよばれる広大な沼沢があったとされるが、いまも南の洞庭湖のほか無数の沼沢や窪地(くぼち)があり、人工水路が網の目のように走る水郷を形成する。

 気候は夏がとくに暑い大陸性気候で、年降水量は800~1600ミリメートルである。解放前は江漢平原はしばしば大水害にみまわれた。解放後は荊江(けいこう)分洪区、杜家台(とかだい)分洪区がつくられて、増水期の流量を調節できるようになった。さらに堤防の整備や河道の付け替えも行われ、漢水上流部に丹江口(たんこうこう/タンチヤンコウ)ダムが完成、長江本流にも宜昌(ぎしょう/イーチャン)付近に葛洲壩(かっしゅうは)ダムが完成、三峡(さんきょう/サンシヤ)ダムも2009年に完成した。

 農産物は米、小麦、トウモロコシ、サツマイモ、大豆、綿花、苧麻(ちょま)、ゴマのほか、丘陵や山地では茶、桐油(とうゆ)、ウルシコルクガシ、柑橘(かんきつ)類などを産する。鄂西山地には広大な天然林があり、江漢平原の沼沢では淡水魚の生産量も多い。地下資源には黄石(こうせき/ホワンシー)市の大冶(だいや/ターイエ)鉄山のほか、銅、燐(りん)、岩塩、石膏(せっこう)、石炭などもある。また江漢油田が開発され、河南(かなん/ホーナン)省の南陽(なんよう/ナンヤン)油田の石油とともに荊門で製油している。解放前は紡織、食品加工が工業の主力で、清朝末期以来の製銅業も解放前夜には破壊されていた。解放後、工業建設は急速に発展し、武漢鋼鉄公司(コンス)の建設のほか、機械、化学、紡織、セメントなどの工場が立地し、十堰(じゅうえん/シーイエン)には中国第二自動車工場も完成した。また古くから水陸交通の要衝であったが、現在も京広(けいこう)、枝柳(しりゅう)、焦枝(しょうし)、京九の諸鉄道が南北に走り、漢丹(かんたん)、襄渝(じょうゆ)の両線により陝西(せんせいシャンシー)省、四川(しせん/スーチョワン)省と武火鉄道により大冶、九江(きゅうこう/チウチヤン)とも連絡している。水運路としては長江、漢水の利用度が高く、夏の増水期には1万トン級の汽船が武漢までさかのぼる。

[河野通博]


湖北
こほく

滋賀県北部、東浅井郡(ひがしあざいぐん)にあった旧町名(湖北町(ちょう))。現在は長浜市の西南部に位置する地域。1955年(昭和30)小谷(おだに)、速水(はやみ)の2村が合併、町制を施行して成立。1956年朝日村を編入。2010年(平成22)東浅井郡虎姫(とらひめ)町、伊香(いか)郡高月(たかつき)町、木之本(きのもと)町、余呉(よご)町、西浅井(にしあざい)町とともに長浜市へ編入。琵琶湖(びわこ)北部に位置し、北東部は山地であるが、地域の大部分は高時川の扇状地性平野である。中世の速水荘(しょう)の地で、戦国時代は小谷城(国指定史跡)を本拠とする浅井氏が支配した。JR北陸本線、国道8号、365号(北国脇往還(わきおうかん))が南北に走る。典型的な水田単作地帯であったが、近年は麦、大豆などの転作農業も盛んである。湖岸の尾上(おのえ)港ではアユ漁などが行われる。尾上には野鳥センターと琵琶湖水鳥・湿地センターがあり、付近はオオヒシクイ(天然記念物)の南限越冬地として知られる。また近くに尾上温泉がある。

[高橋誠一]


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百科事典マイペディア 「湖北」の意味・わかりやすい解説

湖北[省]【こほく】

中国中部,洞庭湖の北の省。簡称は鄂(がく)。省都は武漢。地勢は西高(1000m以上)東低で,長江が省の西境の三峡の険から東流し,漢水が北西境から南東流して江漢平原を形成する。河川,湖沼が多く,水運に恵まれ,京広鉄路(北京〜広州),京九鉄路(北京〜九竜)が省を縦断し,また自動車道路が発達しており,水陸交通の華中における中心をなす。全国有数の農業地帯(江漢平原の米,小麦,西部山地のトウモロコシ,江漢平原の綿花,南部山地の茶など)で,林産物では桐油,漆などを産する。地下資源では鉄(大冶),応城の石膏(全国一)・岩塩などが有名であり,近代工業では武漢を中心に製鉄・製鋼(武漢鉄鋼コンビナート),機械,紡織,タバコ,食品,セメント,化学などの工業が盛ん。18万5900km2。6165万人(2014)。
→関連項目武当山

湖北[町]【こほく】

滋賀県東浅井(ひがしあざい)郡,琵琶湖北東岸の旧町。米作中心の農村地域で,家内工業のビロード製造も営み,余呉川河口の尾上(おのえ)はコアユを特産。製材,金属などの工業も営む。北陸本線,国道8号線が通じる。浅井長政が居城した小谷(おだに)城跡(史跡)があり,湖岸は琵琶湖国定公園に属する。1993年に琵琶湖がラムサール条約登録湿地となる。2010年1月東浅井郡虎姫町,伊香郡高月町,木之本町,余呉町,西浅井町と長浜市へ編入。42.76km2。8926人(2005)。
→関連項目小谷城

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湖北」の意味・わかりやすい解説

湖北
こほく

滋賀県北部,長浜市中南部の旧町域。琵琶湖北東岸に位置する。1955年小谷村と速水村が合体し町制,1956年朝日村と合体。2010年長浜市に編入。対岸の葛籠尾崎(つづらおざき)東半部に飛び地があった。姉川,余呉川流域の沖積地は米作地帯。尾上漁港では小アユ漁などが行なわれる。東部の小谷山(495m)には織田信長に滅ぼされた浅井氏の小谷城跡(国指定史跡),湖岸には尾上温泉がある。湖岸一帯は琵琶湖国定公園に属する。

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改訂新版 世界大百科事典 「湖北」の意味・わかりやすい解説

湖北(旧町) (こほく)

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