日本大百科全書(ニッポニカ) 「都見物左衛門」の意味・わかりやすい解説
都見物左衛門
みやこけんぶつざえもん
一中節(いっちゅうぶし)都派の曲名。略称「見物左衛門」。1726年(享保11)2世都一中作品。江戸・市村座の歌舞伎(かぶき)狂言『鶏奥州源氏(やこえのとりおうしゅうげんじ)』のなかで市村竹之丞(たけのじょう)が演じて大当りした作品。和泉(いずみ)流狂言の同名の作品は、これから題材をとっている。旅人が京の名所を見物して歩くようすを、名所、名物を織り交ぜながら歌っている。見物左衛門ということばは、昔からお上りさんの都会見物の意味にも使われている。前半は狂言をまねた詞(ことば)に始まり、後半には「万歳」の曲調を取り入れ、三味線も、二上(あが)り―本調子―三下(さが)りと調弦を変え、全体に変化に富んだ作品になっている。
[茂手木潔子]