化学辞典 第2版 「酸化ヨウ素」の解説
酸化ヨウ素
サンカヨウソ
iodine oxide
ヨウ素の酸化物の総称で,次の4種類がおもなものであるが,そのほかI2O7やラジカルのIO2,IOなどの報告がある.【Ⅰ】五酸化二ヨウ素(diiodine pentaoxide):I2O5(333.81).ヨウ素酸HIO3を195 ℃ で加熱脱水,I2 をClO2またはN2O5で酸化してつくられる.単斜晶系.無色の針状結晶.2個の三方すい型のIO3が1個のOを共有して結合した形である.∠I-O-I約139°(橋かけ).密度5.08 g cm-3.275 ℃ で O2 と I2 に分解する.水に易溶(HIO3になる).可燃物とまぜて衝撃を与えると爆発する.強い酸化剤で,COをCO2に酸化する.
5CO + I2O5 → I2 + 5CO2
この反応は,COの検出や定量分析に用いられる.[CAS 12029-98-0]【Ⅱ】四酸化二ヨウ素(diiodine tetraoxide):I2O4(317.81).濃硫酸にHIO3を溶かして煮沸すると得られる.空気中でも安定な黄色の結晶.[IO]+ [IO3]-のIOが鎖状につながったポリマー構造をもつと考えられる.密度4.2 g cm-3(10 ℃).固体を加熱すると約85 ℃ で I2 とI2O5とに分解する.冷水に難溶.熱水に溶けて I2 とHIO3とになる.[CAS 12399-08-5]【Ⅲ】九酸化四ヨウ素(tetraiodine nonaoxide):I4O9(651.61).CCl4溶液中で I2 と O3 との反応で得られる.吸湿性の黄色の粉末.固体中では,I(IO3)3のIO3相互間が網目状につながった構造と考えられている.空気中では75 ℃ で分解してI2O5となる.水と反応して I2 とHIO3になる.[CAS 73560-00-6]【Ⅳ】三酸化ヨウ素(iodine trioxide):IO3(174.90).70 ℃ で濃硫酸でオルト過ヨウ素酸H5IO6を処理すると得られる.黄色の結晶.I4O12を単位とする層状ポリマー構造をもつと考えられる.[CAS 13870-16-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報