日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉤状胃」の意味・わかりやすい解説
鉤状胃
こうじょうい
胃の生理的形状は、X線検査において立位でバリウムを多量に飲んだときの所見から、伝統的に鉤状胃と牛角(ぎゅうかく)胃に分類されてきた。日本人の場合には従来、鉤状胃から進んで下垂胃を示すものが多く、牛角胃さらには横胃が多くみられる欧米人と対照的であったが、栄養と体位の向上に伴い、最近では牛角胃の頻度が高くなってきたと指摘されている。機能的にみると、鉤状胃に比較して牛角胃は胃壁の緊張や蠕動(ぜんどう)などの運動機能のほか、胃液分泌機能も亢進(こうしん)していることが多く、体型も肥満型が多い。臨床的には、鉤状胃では胃潰瘍(かいよう)が比較的多くみられるのに対し、牛角胃では十二指腸潰瘍が多い傾向がある。
[石森 章]